1月24日妥当レンジ 21,200円~22,900円
新型肺炎の影響は未だ。安易なリバウンド期待は禁物。

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<内需、外需(中国)への期待は剥落>
■新型コロナウイルスによる肺炎の死者がはじめて確認されたのが、1月11日。それが現在(28日)では死者は107人に達し、武漢以外の都市にも死者が発生している。日本株市場は、週明け大きく下落したものの、ウイルスそのものの脅威だけでなく、内需、外需(中国)への影響についてはまだ織り込む段階にはないと考える。
■中国政府は27日に、春節(1/24-30)に伴う連休を2月2日まで3日間延長するとの異例の発表を行った。地方政府によってはより長い期間を休業とする動きもある。また、中国政府は27日より海外団体旅行を取りやめた。消費増税後の国内消費があまり芳しく無い中で、訪日外国人の約3割を占める中国人の訪日が制限されることや、中国国内の生産停滞が予想されるが、その影響についてはまだ未詳である。
■今週は、28日:米消費者信頼感指数(1月)、30日:米10-12月GDP速報の発表に加えて、米FOMC(28-29日)が予定されている。米国経済は堅調さが維持されていると考えるが、国内、中国は不安要素が大きい。国内は、31日発表の鉱工業生産指数(12月)・商業販売統計(12月)が注目される。それより何よりも、31日発表の中国製造業PMI(国家統計局)が気になるところである。

< 「コンセンサスDI」は2週連続、全期間で50%を下回る>
■ 「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、今期・来期で前週比マイナスとなった(再来期は僅かにプラス)。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は2週連続全期間で50%割れとなった。
■中国の新型コロナウイルスに対する懸念から日経平均株価は23,000円に迫る大幅な下落となったが、まだ妥当レンジから見ればやや割高感が残る。内需や外需(中国)への影響が今後は明らかになってくることが予想されるだけに、安易なリバウンド狙いはお奨めできないと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,200円~22,900 (前回21,200円~22,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(124日)

今期予想EPS 1250.19 (前週1255.40円)
来期予想EPS 1376.96 (前週1379.99円)
再来期予想EPS 1501.45 (前週1501.19円)
今期予想PER 19.06 (前週19.15倍)
来期予想PER 17.30 (前週17.42倍)
再来期予想PER 15.87 (前週16.01倍)
来期予想PBR 1.13 (前週1.13倍)
来期予想ROE 6.52% 前週 6.47%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.26% (前週 6.20%)

1月24日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  


27日(月曜)の下落をみてもまだ妥当レンジよりは割高な水準。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 46.748.457.7%→45.342.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.9%→45.954.7%→42.746.2
2週連続で全期間50%を下回る(今期は39.5
%)。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

コンセンサス予想EPSは各期間ともに、2018年年初の水準にまで低下。

12ヵ月フォワード予想EPSに基づく)予想PER17.81倍は、16(18.26倍)、18(18.38倍)の高値水準に近い。予想EPSが減少方向が続くのであれば、株価が上がらなくても同水準に達する可能性も

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。