1月10日妥当レンジ 21,300円~23,000円
中東情勢一服から経済指標や企業業績に焦点が移る

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<緊迫の後の安堵相場は続くのか?>
■7日に、イラクにある米軍の駐留基地がイランによる十数発の弾道ミサイルによる攻撃を受け、市場は緊迫感に包まれた。しかし、米国側には犠牲者はなく、8日にトランプ大統領は軍事力を誇示しつつも「使うことは望まない」として、報復措置として経済制裁を強化するものの軍事力を行使しないことを表明した。その後の報道で、イランは攻撃を事前通告していたなど、双方が本格戦闘を望まないことが確認され、市場の警戒感は一気に低下した。
■中国側は貿易協議の合意に関して具体的な公表を避けていたが9日に、中国商務省の報道官が劉鶴副首相が渡米し、15日に貿易協議の第1段階の合意文書について署名すると発表した。また、米中貿易協議に関連して、米財務省は、13日に公表した半期為替報告書において5ヵ月ぶりに中国を「為替操作国」の指定を解除した。米中関係においても市場には追い風が吹いている。
■先週は、英国のEU離脱関連法案の英下院での可決(9日)、台湾総統選での民主進歩党の蔡英文総統が圧倒的得票で再選(11日)、など国際政治面では大きな動きがあったがほぼ事前予想通りであったので大きな反応は無かった。
■10日発表の米雇用統計(12月)は、非農業部門雇用者数が前月比+14.5万人と予想(+18万人)を下回った。平均時給の伸びも前年同月比+2.9%と再び3%を下回るやや弱い内容であり、今後発表される経済指標には注視したい。今週は、16日に米小売売上高、17日に米住宅着工件数や鉱工業生産が発表される他、17日には中国の各種統計(鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資など)が発表される(いずれも12月分)。

<「コンセンサスDI」は全期間で50%を上回る>
■3Q決算前でサンプル数が少ないものの、「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、来期・再来期ベースで僅かながらプラスとなった。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は全期間で50%超となった。決算前のイレギュラーな動きなのかトレンド変更なのか翌週以降を注視したい。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,300円~23,000 (前回21,100円~22,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月10日)

今期予想EPS 1260.49 (前週1261.50円)
来期予想EPS 1386.66 (前週1386.47円)
再来期予想EPS 1507.28 (前週1507.03円)
今期予想PER 18.92 (前週18.75倍)
来期予想PER 17.20 (前週17.06倍)
再来期予想PER 15.82 (前週15.70倍)
来期予想PBR 1.13 (前週1.12倍)
来期予想ROE 6.55% 前週 6.55%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.28% (前週 6.31%)

1月10日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  


株価はまだ割高感が強く、地政学リスクの顕在化でまだ調整余地大きい。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.645.646.748.457.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.246.752.9%→45.954.7%。
サンプル数が少ないものの、全期間で50%を上回る(今期は57.3%)。
決算前の狭間なのか?トレンド変化なのか?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。