12月13日妥当レンジ 21,300円~23,100円
米中合意(第1段階)は、まだ“一時休戦”に過ぎない

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<13日の東京市場は予想以上の上昇>
■13日の日経平均株価は前日比598円高の2万4,023円となり、年初来高値を更新。12日の英議会下院選挙での保守党の圧勝と、米中貿易交渉において「第一段階」の合意に至ったことが要因であった。加えて、市場には15日の制裁関税(1,600億ドル分)の発動を控え市場の警戒感が結果的に強かったこともあり、13日がSQに重なったため買い戻しの動きが大きく発生したものと考えられる(1部市場に比較して、2部や新興株式市場の上昇が限定的だったことがこれを表している)。11日の米FOMCにおいて20年の金利予想で引き上げが無かったことも結果的に株価にはブラスに働いた。
■米国側の発表によれば、中国が今後2年間で計2,000億ドルの対米輸入を増やすこと(17年:1,860億ドル)、農産品の対米輸入については年400~500億ドルに引き上げる(17年:240億ドル)、知的財産権保護や金融サービス市場の開放、通貨政策の透明性を高める、合意の履行状況を監視する機関も設けるとある。これに対応して米国は、第4弾1,600億ドル分の発動を無期限で延期、9月に発動した1,200億ドル分の税率を15%→7.5%に引き下げるという内容だ。ただし、中国側の発表では対米輸入の金額については明らかにされず、米国は段階的に過去の制裁関税も引き下げるとしている。米中の発表内容には温度差があり、(15日にライトハイザー氏が明言したものの)正式に調印されるまでは多少の警戒は必要かもしれない。
■16日に発表された中国の経済統計(11月)において、鉱工業生産は前年同月比+6.2%と回復(予想+5.0%、10月+4.7%)。小売売上高も同+8.0%と10月(+7.2%)から回復したように見えるが、豚コレラの影響による物価上昇を加味すれば、実質+4.7%に留まった(10月も実質+4.7%)。

< 「IFIS/TIWコンセンサス225」は全期間で前週比マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、2週連続で全期間でマイナス。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)も全期間で50%割れ。特に今期が弱く、企業業績見通しの悪化は止まっていない。TIWが算出している12ヵ月フォワード(移動平均)ベースの予想PERは18倍に迫っており割高な水準に入っている。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,300円~23,100 (前回21,100円~22,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月13日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月13日)

今期予想EPS 1274.27 (前週1276.84円)
来期予想EPS 1390.14 (前週1392.74円)
再来期予想EPS 1511.09 (前週1515.64円)
今期予想PER 18.85 (前週18.29倍)
来期予想PER 17.28 (前週16.77倍)
再来期予想PER 15.90 (前週15.41倍)
来期予想PBR 1.13 (前週1.11倍)
来期予想ROE 6.52% 前週 6.60%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.27% (前週 6.38%)

12月13日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



妥当レンジ上限から約4%上方に乖離。リスクフリーレートを-0.025% (12/13現在)とした場合の妥当レンジ でも21,40023,200円であり、ファンダメンタル的には割高感が強まった。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.640.445.538.645.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、50.8%→42.445.947.246.7
50%割れ継続。市場は米中の一時休戦による回復を見込んでいるのだろうか?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

コンセンサス予想EPSは、落ち込みが大きな今期予想ベースに比べて、再来期予想ベースは(回復期待によるのか?)比較的水準を保っている。

12ヵ月フォワード(移動平均)で見た予想PERは、株価上昇と予想EPS減少によって、18倍近く(17.88倍:12/13)にまで上昇してきた。

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。