10月4日妥当レンジ 20,000円~21,600円
市場が揺さぶられる中で、二極化が進む

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中貿易交渉、弾劾調査、香港、パウエル議長講演、etc.>
■先週発表された経済指標において、ISM製造業景気指数(1日)、ADP雇用統計(2日)、ISM非製造業景気指数(3日)がいずれもコンセンサスを下回ったこと(特にISM製造業は2ヵ月連続で50割れ)から、米国の景気後退懸念が台頭し、NY株式市場は下落したが、週末(4日)発表の米雇用統計において、失業率が3.5%(前月比0.2ポイント低下)と1969年ぶりの水準になったことを受けて買い戻された。
■トランプ大統領のウクライナ疑惑に関する弾劾調査において、米下院の監視・政府改革委員会などは、ジュリアーニ元NY市長への召喚状に加えて、ホワイトハウス並びにペンス副大統領への文書の提出を要請した。トランプ大統領は、2020年の大統領予備選挙が迫る中で、自らの疑惑に加えて、米中貿易摩擦による米国経済の減速、あるいは外交的な成果の獲得といった苦しい状況が続きそうである。そうした状況を見透かしたかのように北朝鮮との非核化協議において、北朝鮮は交渉決裂を宣言した。
■先端化する香港デモ、弾劾調査の行方、10日から始まる米中閣僚級協議などマーケットを揺さぶる要因は多い。今週は、パウエルFRB議長講演(8日・9日)、FOMC議事録(9日)も次回のFOMC(29-30日)で追加利下げを占う面で注目される。米国景気に市場が神経質になっている面からミシガン大学消費者信頼感指数(11日)にも反応する可能性もあろう。
■リスク要因や経済指標軟化によって、株価は下押しする局面もあるが、構造的に金余り状態は変わらず、利下げ・マイナス金利深堀などから全体株価は維持される構造が続くと考える。ただし、個別には業績悪化によって値を崩す銘柄も少なくはなく、好業績銘柄との二極化が進む展開を予想する。

< 「コンセンサスDI」は、再び30台に急落>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間で前週比マイナスであったが、10月1日の構成銘柄入替の影響が大きい。実質的には、来期・再来期は若干のプラス。ただし、「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)では全期間で30%台に急落。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,000円~21,600 (前回20,300円~22,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月4日)

今期予想EPS 1343.64 (前週1359.96円)
来期予想EPS 1399.81 (前週1412.95円)
再来期予想EPS 1505.72 (前週1518.85円)
今期予想PER 15.93 (前週16.09倍)
来期予想PER 15.30 (前週15.48倍)
再来期予想PER 14.22 (前週14.40倍)
来期予想PBR 1.03 (前週1.04倍)
来期予想ROE 6.70% 前週 6.74%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.87% (前週 6.88%)

10月4日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



日銀のマイナス金利の深堀(の可能性)と業績悪化の綱引きが続く。
リスクフリーレートを-0.220%(10/4)とした場合の妥当レンジは、20,60022,400円。


来期予想ベースのプラス企業比率は、 29.436.541.653.3%→37.0
再来期予想ベースのプラス企業比率は、31.639.642.952.4%→36.6
「コンセンサスDI」は来期・再来期予想ベースともに再び30%台に急落。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。