9月20日妥当レンジ 20,400円~22,100円
金余りと金融緩和によって資産価格の高止まりは続く
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米FOMCでは利下げも、金融政策予測では追加利下げゼロ回>
■米FOMC(17-18日)では市場予想通り、FF金利の誘導目標を年1.75~2.00%へと0.25%引き下げた。ただし、金融政策見通し(ドットチャート)においては、FOMC参加者17人のうち19年末のFFレート誘導目標を、利下げ7人・据え置き5人、利上げ5人と割れ、中央値では変わらず(据え置き)となっている。2020年末においても中央値は変わらずである。
■日銀金融政策決定会合(18-19日)では、足もとの為替が円安方向に推移していたこともあり、追加緩和は温存された。こちらも市場予想通りであった。
■前回のレポートでも述べたが、世界的に金利が失われることによって、債券(特に国債)から少しでも利回りやキャピタルゲインが期待できる資産への資金シフトが生じている可能性がある。年金基金や個人の貯蓄の積み上がりに加えて、デジタルエコノミーの進展から企業の手元資金も積みあがっている。世界で運用される債券のうち2割はマイナス金利との報道もある。世界的な利下げドミノが続く限り、金余りによる株式市場の押し上げはまだ続く可能性がある。
■米中貿易摩擦の継続は、世界経済の減速を強めている。しかし、他方では金融緩和期待を働きかけることによって、利下げドミノを助長している。むしろ、こうした構図が崩れるとするならば、米中の妥結によって経済の回復期待が醸成されるタイミングかもしれない。
■今週は国連総会(24-30日)が開催されるが、他に目立ったたイベント・発表はない。
<「コンセンサスDI」は、全期間で14週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、6週連続で全期間でマイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は14週連続50割れであった。10月以降は、製造業を中心に通期の会社計画を引き下げる企業が頻出するものと考える。
■参考までにリスクフリーレートにマイナス金利(9/20:-0.220%)を適用した場合の妥当レンジは、21,200円~23,000円となる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,400円~22,100円 | (前回20,400円~22,100円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月20日)
今期予想EPS | 1371.16円 | (前週1374.69円) |
来期予想EPS | 1412.22円 | (前週1413.65円) |
再来期予想EPS | 1516.82円 | (前週1518.14円) |
今期予想PER | 16.10倍 | (前週16.00倍) |
来期予想PER | 15.63倍 | (前週15.55倍) |
再来期予想PER | 14.56倍 | (前週14.48倍) |
来期予想PBR | 1.05倍 | (前週1.05倍) |
来期予想ROE | 6.74% | (前週 6.77%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.84% | (前週 6.81%) |
9月20日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
世界的な金余りによる資産価格上昇の恩恵か?
リスクフリーレートを-0.220%とした場合の妥当レンジは、21,200~23,000円。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 30.2%→39.2%→29.4%→36.5%→41.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、30.1%→38.9%→31.6%→39.6%→42.9%。
「コンセンサスDI」はサンプル数は少ないものの、低水準を継続。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |