9月13日妥当レンジ 20,400円~22,100円
リスクフリーレートはマイナスで計算すべきなのか?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<経済減速は金融緩和拡大によって株高を齎す?>
■足もとの日経平均株価(22,185.53円・9/19前場)が妥当レンジ上限を上回ってきた。企業業績見通しの低下が続く環境において、従来の常識からすれば“割高” である。しかしながら、前回の当レポートで若干触れたが、金利が失われる(あるいはマイナス)になることによって、投資資金が債券(特に国債)から少しでも利回りを得られる他の資産(不動産・ゴールド、etc.)へとシフトすることにより、その結果として株式もまた上昇している可能性が考えられる。世界的に年金をはじめとした運用資産は積み上がっており、高齢化が進行する中で一段と加速している。株主資本主義の浸透から配当性向は向上する一方で、労働分配率は低下している。余剰資金は新興国などに投資され、消費財の供給は増えるが、所得が増えない中では購買力はない。そうした状況では、中央銀行が利下げを行っても需要は喚起されず、物価は上がらない。
■経済減速は、従来の常識からは株価にはネガティブであったが、需要喚起と為替レートを保つための緩和競争が続くとの見立てから株価は上昇する。金利が失われてしまったことによって、国債への投資は、量的な限界もあり、魅力がないからだ。18日に米FRBは0.25%の利下げを発表した。サプライズはなかったが、緩和競争の循環が続くとの見方から、株式は買われているのだろう。
<リスクフリーレートをマイナスで考えるべき?>
■欧州では預金者に銀行がマイナス金利を適用する事例が出始めており、それが価値感の転換に繋がっている可能性がある。これまでマイナス金利と言っても中央銀行と銀行間、あるいは国債投資家に範囲が限定されていた。マイナス金利になってもリスクフリーレートは0%以下にはならない(お金を自前の金庫に入れている以上はマイナス金利は適用されない)という常識が崩れつつあるのかもしれない。
■TIWの妥当レンジも長期金利がマイナスに突入して以来、リスクフリーレートを0.0%で計算しているが、参考までにマイナス金利(9/13:-0.160%)を適用した場合の妥当レンジは、21,100円~22,900円となる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,400円~22,100円 | (前回19,900円~21,600円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月13日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月13日)
今期予想EPS | 1374.69円 | (前週1375.32円) |
来期予想EPS | 1413.65円 | (前週1416.36円) |
再来期予想EPS | 1518.14円 | (前週1522.49円) |
今期予想PER | 16.00倍 | (前週15.41倍) |
来期予想PER | 15.55倍 | (前週14.97倍) |
再来期予想PER | 14.48倍 | (前週13.92倍) |
来期予想PBR | 1.05倍 | (前週1.01倍) |
来期予想ROE | 6.77% | (前週 6.72%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.81% | (前週 6.95%) |
9月13日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
企業業績見通しは悪化が続く中で、足もとでは、妥当レンジ上限を上回る。割高なのか?それとも従来と価値基準が変わってきたのか?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 41.9%→30.2%→39.2%→29.4%→36.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.4%→30.1%→38.9%→31.6%→39.6%。
「コンセンサスDI」は低水準が継続。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |