8月23日妥当レンジ 19,700円~21,400円
9月は日経平均2万円の攻防か?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<日米貿易協議は基本合意したが>
■23日の国際経済シンポジウム(ジャクソンホール)におけるパウエルFRB議長の講演は、追加利下げの可能性に含みを持たせつつも、その時期や幅に言質を与えない無難な内容であった。パウエル議長の講演に先立って、中国は米国が9月から発動する制裁関税「第4弾」への報復処置を発表した。それにトランプ大統領が対抗し、(議長の講演後に)2,500億ドル相当の中国製品に課している制裁関税(第1~3弾)を10月1日より25%から30%に引き上げるとともに、第4弾についても税率を15%にすると表明した。
■これを受けて、23日の米国株式市場はダウ工業株30種平均が前日比▲623ドル安となるとともに、週明け26日の東京市場で日経平均株価が終値で▲449円安となるとともに、ドル円は一時104円台の円高となった。同日にトランプ大統領が中国との貿易協議を再開することを表明し、合意の実現に期待を示したことから26日のNY市場は反発したが、市場は疑心暗鬼だ。

<「コンセンサスDI」は、全期間で10週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、2週連続で全期間でマイナス。「コンセンサスDI」は全期間で30%前後という低水準となり、10週連続50割れ。
■米中貿易戦争の影響は、世界的に設備投資の減衰を引き起こしており、個人消費への影響も顕在化しつつある。国内企業業績も下期に一段と悪化することは避けられず、コンセンサス予想の下方トレンドによって、下押し圧力が強まることが予想される。前回のレポートで示したように当面は日経平均の2万円割れは想定していないが、円高が一段と進行し、来年度業績も減益が想定されるような状況になれば決壊する可能性もあるだろう。
■世界的な金融緩和と(財政悪化を前提とした)減税や財政出動は、法定通貨の価値の毀損である(ゴールドの上昇がそれを物語っている)。そうした環境下では資産性の強いビジネスモデルを持つ企業への投資が有効と考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,700円~21,400 (前回19,600円~21,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月23日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月23日)

今期予想EPS 1378.05 (前週 1384.71円)
来期予想EPS 1427.74 (前週1440.11円)
再来期予想EPS 1536.99 (前週1539.08円)
今期予想PER 15.03 (前週14.75倍)
来期予想PER 14.51 (前週14.18倍)
再来期予想PER 13.47 (前週13.27倍)
来期予想PBR 0.98 (前週0.97倍)
来期予想ROE 6.73% 前週 6.82%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.03% (前週 7.14%)

8月23日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  




妥当レンジの下方トレンドは続く。

 

 



来期予想ベースのプラス企業比率は、 
48.147.640.541.930.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.143.337.347.430.1
「コンセンサスDI」は一段と悪化。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。