7月12日妥当レンジ 20,700円~22,400円
米利下げは織り込み済み、他に買い材料はあるのか?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<月末の米FOMCでの利下げは確実視されている>
■先週は、パウエルFRB議長の議会証言(10日、11日)において、「より緩和的な金融政策の必要性が高まっている」との利下げを示唆する発言から、NYダウは史上高値を更新した。
■米国株式の好調が続く中で、世界的な経済環境の悪化が続いている。EUの執行機関である欧州委員会は経済見通しを更新(10日)。ユーロ圏の20年の成長率を+1.4%と前回予想(5月)から0.1ポイント引き下げた(19年は変わらず)。EU離脱に関して混迷を続ける英国は、4-6月GDPがマイナスになる懸念が高まっている(速報値を8月9日に発表予定)。
■6月の中国貿易統計(12日)では、輸出は前年同月比▲1.3%と予想(▲2%)を上回ったものの、輸入は▲7.3%と予想(▲4.5%)を下回った。輸出は5月が米国の関税引上げ前の駆け込みで一時的なプラスであったが、貿易摩擦の影響が色濃く出ている。また、内需の弱さも目立って来た。中国の4-6月期GDP成長率(15日)は、+6.2%と1-3月期の+6.4%から減速した。ただし、一方で同時に発表された6月の鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資はいずれも市場予想を上回った。しかしながら、市場では持続性に疑問が呈されている。
■国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は19年の半導体製造装置の販売額を18年末時点の予想596億ドルから527億ドル(18年比▲18%)へと引き下げた(9日)。
■今週は、国内は6月の貿易統計(18日)、米国は小売売上高(16日)、住宅着工件数(17日)が発表予定である。

< IFIS/TIWコンセンサス225」来期ベースは8週連続マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、2週連続で全期間が前週比マイナス。「コンセンサスDI」も全期間で4週連続50割れとなった。
■今週も特筆すべき材料が無い中で、米利下げの織り込みが進み、プラス材料が見つけ難くなっている。金利低下(あるいはマイナス)で債券投資が困難になる中、中国の経済減速からコモディティにも投資し難い。欧州や新興国も敬遠され気味の中で米国株、日本株に資金が流れているようであるが、そろそろ日本株もふるい落とされそうな気配である。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,700円~22,400 (前回20,900円~22,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月12日)

今期予想EPS 1385.58 (前週 1386.62円)
来期予想EPS 1445.93 (前週 1448.14円)
再来期予想EPS 1557.63 (前週1560.55円)
今期予想PER 15.65 (前週15.68倍)
来期予想PER 15.00 (前週15.02倍)
再来期予想PER 13.92 (前週13.94倍)
来期予想PBR 1.03 (前週 1.04倍)
来期予想ROE 6.89% 前週 6.94%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.93% (前週 7.01%)

7月12日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  


1

日経平均株価は、現状のコンセンサス予想で妥当レンジの中位水準。予想EPSの下方トレンドに沿って下方にシフトすると考える。



2

来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.238.938.444.838.5
再来期予想ベースのプラス企業比率は、50.3%→45.543.048.544.9
サンプル数は決算発表前で少ないもののトレンドは変わらず。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。