6月28日妥当レンジ 20,500円~22,300円
最悪のシナリオは回避されたが、マーケットは喜びすぎ

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中首脳会談は玉虫色の決着>
■注目された米中首脳会談は、1)貿易協議を再開し、中国への制裁関税(第4弾)の発動は当面見送る、2)ファーウェイに対して米国の禁輸処置を安全保障に影響がない範囲で認める、というものであった。市場が身構えていた最悪のケース(交渉が決裂し、全ての中国製品を対象に早い時期に追加関税を適用する)は回避された。
■これに対して、市場はポジティブに反応したが(1日の日経平均株価は+454.05円、NYダウは+117.47ドル)、足もとの経済指標が悪化しつつあることを鑑みればやや過剰に反応したように思われる。
■トランプ大統領が、こうした緩和的な判断に傾いた背景を想像すると、1)中国製品全てへの課税は現時点では、米国企業の反発が強く、経済への影響もあること。2)米国企業の生産地の中国から他国へのシフトへの時間的猶予を与えるため、3)習近平国家主席からお土産を貰った可能性があること、が挙げられる。トランプ大統領は、30日に板門店で北朝鮮の金正恩委員長と会談を行い、非核化交渉の再開で合意したが、G20大阪サミットの直前に北朝鮮を訪問した習近平氏がこうしたお膳立てをした可能性が指摘される。中国が北朝鮮の非核化を後押しするという約束がなされたのであるとすれば、今後の米中関係を覗うためには、北朝鮮との非核化交渉の進展も視野に置く必要があるだろう。
■経済指標では、米国では消費者信頼感指数(6/25)が市場予想より大きく悪化、新築一戸建て住宅販売件数(6/25)が2ヵ月連続で減少、ISM製造業PMI(7/1)も前月比低下。中国製造業PMIは、国家統計局発表(6/30)は前月比変わらずであったが、財新・マークイット(7/1)は49.4と50を下回った。国内でも日銀短観において業況判断指数が2期連続の悪化となった。
■今週は、ISM非製造業PMI(7/3)、米雇用統計(7/5)が注目される。
■7/30-31の米FOMCでの利下げ期待はほぼ織り込まれているだけに経済環境ならびに企業業績の悪化を視野に頭の重い市場展開が続くと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,500円~22,300 (前回20,600円~22,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月28日)

今期予想EPS 1388.86 (前週 1387.49円)
来期予想EPS 1450.75 (前週 1455.89円)
再来期予想EPS 1565.26 (前週 1570.01円)
今期予想PER 15.32 (前週15.32倍)
来期予想PER 14.67 (前週14.60倍)
再来期予想PER 13.59 (前週13.54倍)
来期予想PBR 1.01 (前週 1.01倍)
来期予想ROE 6.92% 前週 6.94%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.05% (前週 7.08%)

6月28日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  


1
マイナス金利の拡大が株価を下支えしているだけ?



2

来期予想ベースのプラス企業比率は、 36.538.738.238.938.4
再来期予想ベースのプラス企業比率は、46.546.550.345.543.0
来期ベースは5週連続で40%未満が続いている

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。