6月7日妥当レンジ 20,600円~22,200円
リバウンド一巡後は、売り方優位の展開か!?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米利下げは円高要因、消費増税、米中貿易戦争激化>
■先週のNY市場ではダウ工業株30種平均が週間で1,168ドル上昇した。要因としては、1)FRBが利下げを容認する姿勢に転じたこと、2)メキシコ製品への関税発動が見送られるという観測(実際に7日に見送り決定)、3)(5月からの調整で生じた)株価の値ごろ感、が挙げられる。
■FRBのパウエル議長は4日の講演において、「景気拡大を持続させるために適切な行動をする」と述べ、利下げを容認する発言を行った。6日のECB理事会では、少なくとも2020年前半まで政策金利を現状の水準に据え置くことが決定された。インド準備銀行は6日、政策金利を0.25%引き下げて5.75%にした。金融緩和期待が強まる中で、5月の米雇用統計が7日に発表されたが、非農業部門雇用者数は前月比7.5万人増と予想(18万人増)を大きく下回る水準であったことで、むしろFRBへの利下げ期待から株価が上昇した。
■米中貿易戦争では、トランプ大統領が中国からの輸入品全てに制裁関税を課す第4弾に関して、6月下旬に予定されている20ヵ国・地域首脳会議(G20)の後に判断する考えを示している。トランプ氏は、首脳会議に際して米中首脳会談が実施されない場合には直後に第4弾を発動する方針を示唆しており、ここからの2週間余りは再び市場は緊張した展開が予想される。
■国内経済は、4月の景気動向指数(7日・速報)はやや上向いたものの、景気ウオッチャー調査(10日)は、現状判断・先行き判断ともに一段と低下した。また、衆参同日選挙を見送る方向が強まっており、消費増税延期の可能性は消えかかっている。国内景気に停滞感が強まる中で、米利下げによる円高の可能性、消費増税による消費者の節約志向などから国内景気への不安が強まりそうだ。
■今週は、5月の米消費者物価指数(12日)、米小売売上高(14日)、5月の中国各種統計(鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資:14日)が注目される。
■株価は大きくリバウンドしたことによって、売り方にとってはむしろ安心感が強まった可能性もある。金融緩和(利下げ)期待の織り込みが進んだことから、今後は経済環境の悪化がストレートにマイナスに反映されやすくなると考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,600円~22,200 (前回20,400円~22,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月7日)

今期予想EPS 1394.78 (前週 1400.39円)
来期予想EPS 1462.96 (前週 1469.87円)
再来期予想EPS 1575.72 (前週 1579.63円)
今期予想PER 14.97 (前週 14.71倍)
来期予想PER 14.28 (前週 14.02倍)
再来期予想PER 13.25 (前週 13.04倍)
来期予想PBR 1.00 (前週 0.99倍)
来期予想ROE 7.03% 前週 7.09%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.14% (前週 7.20%)

6月7日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  




図1
リバウンドを見たことによって、売り方にはむしろ強気の“売り”スタンスを取りやすくなる?


 





図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
66.254.5%→40.636.538.7
再来期予想ベースのプラス企業比率は、55.2%→54.5%→48.146.546.5
先週は、緩和期待、メキシコへの関税の回避額、株価の水準感、からリバウンドしたが、経済環境の軟化は企業収益の悪化を通じて水準切り下げの方向に動く。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。