訪日客目標「6,000万人・15兆円」への展望と課題

2025/02/28

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◆順調に(?)増加している訪日外国人客・消費額

日本を訪れる外国人客が増えています。2024年の訪日客数は約3,687万人と前年から47.1%増加しました。コロナ禍前の2019年に記録した約3,188万人を上回り、過去最高を更新しました(下左図)。また、旅行消費額も8兆円を上回りました(下右図)。
政府は2003年の小泉政権時に「観光立国宣言」を打ち出しました。観光を日本経済の重要な柱とし、地方活性化や国際交流の促進を図る方針を表明しました。その後、安倍政権だった2016年、「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、2020年に「訪日外国人旅行者数4,000万人・消費額8兆円」、2030年に「6,000万人・15兆円」とする目標を掲げました。
この目標と比較すると、現在の進捗は必ずしも順調とは言えません。2020年初からの新型コロナの影響により、消費額は4年遅れで昨年にようやく中間目標(8兆円)に到達しました。他方、訪日旅行者数はまだ4,000万人に届いていません。

◆人手不足問題に直面する観光業界

2030年の最終目標は実現できるのでしょうか。クリアすべき課題の1つに人手不足があります。ホテル・旅館の従業員を十分に確保できていないため、今ある部屋数を使い切れず訪日観光客の潜在的な需要を取り込み切れなくなり始めているとの指摘が聞かれます。

日銀は1月末に発表した展望レポートでサービス収支の分析(BOX1)を公表し、今後の訪日客動向に楽観的な見通しを示しました。他方、別の分析(BOX2)では、主要な16産業の中で、「宿泊・飲食サービス」が労働・資本の代替性が最も小さい産業だという結果を初めて公表しました。すなわち、観光関連サービスは人手不足(労働)を機械(資本)で補うことが他のどの産業よりも難しい分野だということです。

これから2030年の大目標「6,000万人・15兆円」に向かって加速していくためには、人手不足をどう解決していくのかを考えていく必要がありそうです。

「制約は発明の母」という言葉があります。資本による代替が最も困難な分野だからこそ、人手不足を克服する新たなイノベーションが期待されます。

(シニアストラテジスト 稲留 克俊)

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