米国の「TACO」トレードは再現したのか?

2026/01/23

今週の米国株市場ですが、主要株価指数の動きをテクニカル分析の視点で確認すると、20日(火)の取引で、NYダウが25日移動平均線を下抜けたほか、S&P500とナスダック総合についても50日移動平均線を下抜けるなど、短期的な下落トレンド入りを意識させたかと思いきや、翌21日(水)には大きく反発して下落ムードを一掃するなど、値動きの荒い展開が目立っています。

米国株市場の慌ただしさの背景には、トランプ米大統領の動きがあります。グリーンランドの領有をめぐって、反発姿勢を示しているデンマークやフランス、ドイツなどの欧州8カ国に対して、「米国がグリーンランドを取得するまで、欧州8カ国からの輸入に対して追加関税を課す」と表明したことが、国内外の市場に警戒感をもたらし、20日(火)の米国市場では、株安・債券安・通貨(米ドル)安の「トリプル安」となり、安全資産とされる金(ゴールド)は最高値を更新するなど、リスクオフムードが漂い始めました。

しかし、翌21日(水)には、トランプ米大統領が関税発動を見送る姿勢をSNSに投稿したことで、相場のムードが一変し、米国市場は前日と反対の方向に転じました。こうした相場展開を受け、市場の一部では、昨年の相場で見られた「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつも尻込みする)」トレードが再現されたという見方もあるようです。

確かに、昨年4月に米トランプ政権が「相互関税」を発表した際、米国市場がトリプル安で反応したことが、トランプ米大統領の態度を軟化させたという経緯があり、今回も同様の展開になったと考えることができます。

ただし、昨年の場合は、最初に高い関税率をちらつかせ、その後の交渉を通じて、少しでも米国に有利な条件を相手国側から引き出し、トランプ米大統領が「勝利」を宣言できる落とし所を見つけた結果、関税率が引き下げられるという流れでしたが、足元のグリーンランドの領有については、領土という「主権」が絡んできます。

実際に、足元の関税撤回は、トランプ米大統領がNATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長と会談し、「グリーンランドや北極圏全体に関する将来の枠組みの構築について大枠で合意した」ことを根拠としていますが、当事者(領有するデンマークおよびグリーンランド自治政府)がどこまで関わっているのかなど、現時点で不透明な部分は多いと思われます。

軍事・防衛拠点の設置許可をはじめ、レアアース採掘の優先権や共同開発といった資源へのアクセス権、米国企業による港湾や空港整備といったインフラ投資の利権獲得など、グリーンランドの領有そのものではなく、「中身」で妥協するような展開となれば、「グリーンランドの安全保障を確保した」として、トランプ米大統領が勝利宣言をすることが可能になるため、まずは当事者による交渉(ディール)が始まるかが次の焦点になります。

したがって、「TACOトレードが再現した」と楽観し過ぎるのではなく、目先は米企業決算をにらみつつ、グリーンランド問題に追加の動きが出てくるかを確認していくことが重要になりそうです。

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