『ベージュブック』、賃金・物価の上昇は緩やか

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『ベージュブック』は、米国に12ある地区連邦準備銀行(地区連銀)が、管轄地域の経済状況をまとめた「地区連銀経済報告」のことです。表紙のベージュ色が名前の由来であり、経済情勢についての総合判断、主要産業の動向や雇用・物価動向などがまとめられています。『ベージュブック』は、年に8回開催される連邦公開市場委員会(FOMC)の2週間前の水曜日に公表され、金融政策の判断材料として用いられます。

【ポイント1】 経済活動に関する評価は、「緩慢、ないし緩やかなペースで拡大」

前回7月の報告に比べ、特に目立った変化はなし

 

■9月6日に公表された最新の『ベージュブック』は、7月12日発表の前回報告から特に目立った変化はなく、全ての地区で「経済活動は“緩慢、ないし緩やか”なペースで拡大」と総括しました。

■8月末にテキサス州湾岸部を襲ったハリケーン「ハービー」の影響については、石油・天然ガス生産の一部停止といった被害が報告されましたが、全体的な影響を定量的に測るのは現時点では時期尚早としました。

 

 

 

【ポイント2】労働需給は逼迫した状態が続いているが、賃金上昇は緩やか

原材料価格は上昇、しかし最終財への価格転嫁は進まず

 

■内容を詳細に見ると、ほとんどの地区で個人消費は増加、製造業は緩やかに拡大しました。ただ、長引く自動車産業の停滞に対して、懸念の声が聞かれました。

■住宅・商業用ビルの建設は、僅かに増加しました。住宅市場では、在庫不足が販売の足枷となっているもようです。一方、商業銀行の融資量は、大半の地区で緩やかに増加しました。

■労働市場は、引き続き労働需給の逼迫が指摘されましたが、賃金上昇圧力は限定的とされました。

■物価は、原材料価格が全般的に上昇したものの、最終財価格への転嫁は進まなかったもようです。

 

 

 

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【今後の展開】緩やかな景気拡大、緩やかな金融緩和の解除継続の見通し

 

■今回の『ベージュブック』では、景気は緩やかに拡大、賃金、物価の上昇は相変わらず緩やかなことが示されました。

■前回FOMC議事要旨の内容も合わせて考えると、9月19日、20日に開催される次回FOMCでは、「利上げは見送り、バランスシートの縮小」が決定されると予想されます。

■9月6日の米国市場では株価が上昇、債券価格は下落(利回りは上昇)しました。トランプ米大統領と議会指導部が、ハリケーン「ハービー」の被害救済法案に、12月15日までの債務上限引き上げと政府運営資金の確保を抱き合わせることで合意したためです。今回の『ベージュブック』は特に新規の内容もなく、影響は限定的だったようです。

 

(2017年 9月 8日)

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