『アジア通貨危機』から20年、危機再来は?

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『アジア通貨危機』とは、1997年7月のタイの通貨暴落をきっかけに近隣諸国・地域の通貨が急落し、経済の大混乱を引き起こした金融危機のことです。ヘッジファンドなどの投機筋の売りによる各国・地域通貨の暴落を発端に、企業の債務危機や銀行の破綻が連鎖的に起こり、アジア経済全体が深刻な打撃を受けました。 『アジア通貨危機』から20年、世界的に投資マネーの力が強まるなか、危機再来はないのでしょうか?

【ポイント1】通貨危機の教訓を生かし、アジアで金融協力

通貨協定「チェンマイ・イニシアチブ」を創設

 

■1997年7月にタイから始まった『アジア通貨危機』は東南アジアを起点に、アジア全体へ波及しました。当時アジアは経済の急成長で投資資金を集めていましたが、投機筋の売りをきっかけに資金が一斉に流出しました。ドル不足に陥ったタイ、韓国、インドネシアは、国際通貨基金(IMF)の管理下に入りました。

■アジア各国・地域は『アジア通貨危機』の教訓を踏まえ、金融協力を強化してきました。日中韓及び東南アジア諸国連合(ASEAN)は、通貨危機の際にドルを融通する、安全網としての通貨協定「チェンマイ・イニシアチブ(CMI)」を2000年に開始しました。その後、CMIの規模や体制を拡充させてきました。

 

【ポイント2】アジアは経済基盤を改善

経常収支黒字や外貨準備高増

 

■アジア各国・地域は、『アジア通貨危機』の教訓から対外借り入れに慎重になり、経済基盤を大きく改善させてきました。国際収支を見ると、経常収支が黒字の国・地域がほとんどです。また、外貨準備高を大幅に増加させた一方、短期対外債務残高は経済規模に対して抑制されたため、短期対外債務が外貨準備高に占める割合は大きく減少し、債務返済能力が高まりました。

■『アジア通貨危機』当時、多くの国・地域の経常収支が赤字で、短期マネーに依存していた構図とは様変わりです。

 

 

 

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【今後の展開】『アジア通貨危機』の再来なし

 

■アジア各国・地域は、国際収支の改善や外貨準備高の増加によって外部からのショックに対する耐性を高めたと見られます。更に、通貨危機に対して「チェンマイ・イニシアチブ」などの安全網を築いていることも通貨の信任をもたらすと考えられます。

■米国が利上げ局面に入っていることで再び新興国から資金流出が起きる可能性はありますが、アジア域内では外部ショックに対する耐性が増しており、『アジア通貨危機』の再来はないと思われます。

 

(2017年 7月 10日)

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