ユーロ圏の「マイナス金利」(欧州)

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欧州中央銀行(ECB)は、2014年6月5日の定例理事会において「マイナス金利」の導入を決定し、預金ファシリティ金利をゼロ%から▲0.1%へ引き下げました。ECBはその後も段階的に「マイナス金利」の幅を引き下げていますが、その効果についてはさまざまな議論がみられます。そこでECBのバランスシート、銀行貸出、物価について、ECBが「マイナス金利」を導入した後の変化を検証し、実体経済への影響を考えます。

【ポイント1】「マイナス金利」導入後、ECBの総資産残高は増加

負債項目では当座預金や預金ファシリティの残高も増加
■2014年5月30日から2016年3月4日までの間、ECBの総資産残高は約0.7兆ユーロ増え、約2.9兆ユーロに達しています。負債項目では当座預金が約0.4兆ユーロ、預金ファシリティ制度の残高が約0.2兆ユーロ、それぞれ増えました。いずれも金融機関のECBへの預金勘定項目ですが、当座預金の超過準備と預金ファシリティ金利への「マイナス金利」付利にもかかわらず、残高は増加していることが分かります。

【ポイント2】銀行貸出にも変化

家計向け中心に回復の兆し
■次に銀行の貸出行動を確認します。企業向け貸出残高の前年比変化率は、2014年5月が▲2.7%でしたが、2016年1月は+0.4%まで持ち直しました。

■同様に家計向け貸出残高をみると、2014年5月は▲0.7%でしたが、2016年1月は+1.9%まで回復しました。

■当座預金などECBへの預金残高が増えた一方、銀行貸出にも変化がみられ、特に家計向け貸出は住宅ローンを中心に総じて堅調な伸びとなっています。

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【今後の展開】3月10日の追加緩和で域内国債の利回りは一段と低下へ

物価押し上げ効果はまだみられず
ただ物価の動きをみると、エネルギーなどを除くコア消費者物価指数は2014年5月が前年比+0.7%、2016年2月は+0.7%となっており、「マイナス金利」の物価押し上げ効果はまだ明確にみられていません。

追加緩和で国債利回りは更に低下へ
ECBは3月10日、物価の伸び悩みを警戒し、預金ファシリティ金利の引き下げを含む包括的な金融緩和を決定しました。ユーロ圏の国債利回りは一段の低下が見込まれ、改めて今後の物価動向が注目されます。

(2016年3月15日)

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