『カーボンニュートラル』への道(1)

『カーボンニュートラル』への道(1)

欧州連合(EU)が、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させようとするグリーンリカバリー計画を提唱したことを契機に、各国・地域では気候変動への取り組みが加速しています。日本でも菅首相が2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする『カーボンニュートラル』を宣言しました。マーケット・キーワードでは、『カーボンニュートラル』の取り組みについてシリーズで取り上げ、第1回は政府の取り組みについて見ていきたいと思います。

【ポイント1】各国・地域で加速する気候変動への取り組み

■昨年5月の欧州連合(EU)のグリーンリカバリー計画を契機に、各国は環境を重視した経済対策を発表しました。同11月には気候変動政策を掲げるバイデン氏が大統領選に勝利し、その流れが決定的となりました。

■日本では、同10月に菅首相が、『カーボンニュートラル』を2050年までに実現すると宣言しました。『カーボンニュートラル』とは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量から、植林やCO2回収貯留などによる吸収・除去量を差し引いた実質的な排出量をゼロにすることを言います。

【ポイント2】着々と進む『カーボンニュートラル』政策    

■菅首相による『カーボンニュートラル』宣言を受け、政府は同12月に「グリーン成長戦略」を発表しました。「グリーン成長戦略」は「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策で、具体的な政策対応が着々と進められています。

■政府は産業競争力強化法等の改正案を今国会に提出し、「グリーン社会」への転換等を後押しします。『カーボンニュートラル』実現に向け、脱炭素効果の高い製品の設備投資や生産設備の脱炭素化投資への税制優遇や金融支援が盛り込まれました。

■国土交通省は2025年にも、新築住宅の省エネルギー基準適用義務化を導入する方針を検討しています。2021年度から中規模オフィスビルなどで省エネ義務化が始まりますが、家庭分野まで対象を拡大し温室効果ガスの排出を抑制する考えです。

【今後の展開】今後、『カーボンニュートラル』へ向けた対応が加速

■今年は、温暖化ガス主要排出国の首脳会合や第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開催が予定されており、各国の『カーボンニュートラル』へ向けた対応が更に加速しそうです。

■国内では2050年に向けた道筋として2030年目標の策定が進み、併せてエネルギー基本計画や地球温暖化対策計画が見直されます。欧州を中心に導入が進む「カーボンプライシング」の仕組みが導入され、炭素税や排出枠取引が検討されることとなります。各産業界は対応を迫られることとなりそうです。

(2021年3月24日)

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