運用者の視点:中国の『2021年の春節』

2021/02/08

運用者の視点:中国の『2021年の春節』

「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、新型コロナウイルスの感染再拡大を警戒するなか、例年とは違う年越しが必要となる、中国の『2021年の春節』を見ていきます。

【ポイント1】今年の春節は「今いる場所で年越し」が主流に

■日本では多くの人が年末年始の故郷への帰省を自粛しましたが、中国も同様で、『2021年の春節』休暇(2月11~17日)の人の移動はかなり低調になると予想されています。新型コロナウイルスの感染再拡大を警戒する中国政府が帰省や旅行の自粛を呼びかけているためで、多くの市民は、今いる場所で年越しすることになりそうです。政府の呼びかけの効果は、既に数字で確認され始めています。例えば、中国の国鉄運営を担う中国国家鉄路集団は、春運(春節期間の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送体制)最初の3日間(1月28~30日)の鉄道利用者数が、前年同期比で70%以上の減少になったと発表しています。

【ポイント2】人の移動を抑制するために

■帰省の自粛を促すために、地方政府によっては、自粛する労働者に補助金やクーポン券を支給し、あるいは都市戸籍を取得するために必要なポイントを加算するなど、措置を講じています。また、鉄道や航空会社などの交通機関も、予約の変更やキャンセルを無料にする措置を発表するなど、帰省や旅行を自粛しやすい環境整備が進められています。このため、毎年この時期に繰り返される「民族大移動」は、かなり抑制されたものになると思われます。そして春節が終わると、3月には重要な政治イベントである全人代(全国人民代表大会、国会に相当)を控えています。コロナの封じ込めに成功したと言われる中国であっても、少なくともこの時期までは、人の移動に対して一定の制約がかかり続けると考えるべきかもしれません。

【今後の展開】帰省の自粛による効果

■経済的観点からは、帰省や旅行の自粛は歓迎すべきものではありません。運輸やレジャー、外食、ホテルなどサービス業へのダメージは日本と同様に深刻で、状況によっては政府の積極的なサポートが必要になると思われます。しかし、帰省を自粛したとしても、消費全体では帳尻が合う可能性も考えられます。帰省先に落ちるはずだった消費需要は、生活必需品や医薬品・防疫品、プチ贅沢品の購入、近場でのレクリエーションなどの形で実現されることもあるからです。また、経済全体に与える影響として、中国の生産活動にもたらすプラス効果にも注目です。毎年の春節の時期、帰省した農民工の一定割合が工場に戻らず、操業の再開に遅れがあったり休暇前の生産水準に戻すのに時間がかかるという問題がありました。出稼ぎ労働者が帰省せず都市部に残ることによってこの問題が解決される点は、もっと注目されても良いのかもしれません。

(2021年2月8日)

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