アジア・オセアニアのリート市場は上昇継続 足元の感染再拡大とワクチン普及期待に左右される
アジア・オセアニアのリート市場は上昇継続
【ポイント1】アジア・オセアニアリートは総じて上昇継続
■2020年12月以降のアジア・オセアニアのリート市場は、新型コロナの感染再拡大が懸念されましたが、ワクチン普及による経済活動の正常化への期待から投資家心理が改善し、総じて上昇しました。1月8日現在、アジア・パシフィック・リート指数(除く日本、現地通貨ベース)は11月末比+1.1%、香港は同+3.3%、シンガポールは同+4.8%、オーストラリアは同▲1.4%でした。
■香港は、感染再拡大により行動規制が強化されたものの、今後の小売売上高の改善期待を背景に上昇しました。シンガポールは、経済活動再開の最終段階への移⾏が発表されたことから上昇しました。一方、オーストラリアは、感染再拡⼤により⼀部で都市封鎖や行動規制強化が再導入されたことなどが嫌気されました。
【ポイント2】重要性高まるESG、今後はリート市場でも注目
■2020年は、新型コロナ感染拡大を受けて新たな生活様式が求められる中、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の課題に積極的に取り組む企業に資金を投じるESG投資が改めて注目されました。株式市場でESGの重要性が高まっていることから、リート市場でも同様の動きが広がるとみられます。リートの評価においては、安定配当や投資主価値の維持向上に貢献する運営が継続的にできているか、中小リートの業界再編やスポンサー交替を通じて企業統治の改善が起こるのかなど、とりわけ企業統治(G)が重要と考えられます。
【今後の展開】ワクチン普及で経済が正常化する展開を見据える動きに
■各国でワクチン接種が進んでおり、中期的にワクチン普及で経済が正常化する展開を見据えた動きが予想されます。オーストラリア市場は、金融緩和・財政政策が支えとなり底堅い推移を予想します。感染再拡大への懸念などからオフィスセクターの見通しは厳しいですが、雇用改善、小売売上高の持ち直しなど内需回復の流れが続き、物流、産業施設などは堅調な推移が見込まれます。シンガポール市場も政府の徹底した感染対策の下、安定した運営が強みとなり底堅い推移を想定します。経済活動再開の最終段階に入り、行動規制の緩和が商業施設やホテルの業況にプラスになるとみられます。
■一方、香港市場は、感染動向を睨みながらの展開が予想されます。飲食店への規制強化により、商業施設リートがテナントへの支援を増額する可能性があります。一方で、在宅時間長期化からスーパーマーケットの売上げは堅調な推移が見込まれ、同施設を多く保有する最大手のリートは安定した配当を維持する見通しです。
(2021年1月13日)
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