日本株急騰時に上昇率の大きかった銘柄とセクターの特徴
市川レポート(No.571)日本株急騰時に上昇率の大きかった銘柄とセクターの特徴
- 9月に大きく上昇したのは、機械、保険業、化学、非鉄金属など、外需、金融に分類される銘柄。
- 一方、年初から9月に大きく上昇したのは、サービス業や情報・通信業など内需に分類される銘柄。
- 日本株一段高のカギを握るのは景気敏感銘柄で、本邦中間決算や米中経済動向には要注意。
9月に大きく上昇したのは、機械、保険業、化学、非鉄金属など、外需、金融に分類される銘柄
日経平均株価は、終値ベースで9月14日に23,000円台を回復した後、わずか6営業日後の9月26日に24,000円台を回復しました。5月以降、23,000円水準は比較的強い上値抵抗線となっていたため、この上抜けで上昇ペースは急加速しました。上昇率は9月13日を基準とし、9月26日までの期間で5.3%です。今回のレポートでは、この時に上昇率の大きかった銘柄とセクターを検証します。
9月13日から9月26日までの間、日経平均株価の構成銘柄のうち、最も上昇率が大きかったのは昭和電工の22.6%でした。次いで、第一生命ホールディングスの16.0%、宇部興産の15.7%、TDKの15.6%、三井金属鉱業の15.5%が続きます(図表1)。また、上昇率上位30銘柄の多くは、機械、保険業、化学、非鉄金属、鉄鋼に分類され、外需、金融関連銘柄の好調さが目立ちます。
一方、年初から9月に大きく上昇したのは、サービス業や情報・通信業など内需に分類される銘柄
では、少し時間をさかのぼって年初からの動きを確認してみます。2017年12月29日から2018年9月13日までの間、日経平均株価の構成銘柄のうち、最も上昇率が大きかったのはエーザイの63.6%でした。次いで、第一三共の56.2%、昭和シェル石油の49.7%、太陽誘電の47.9%、ヤマトホールディングスの47.7%が続きます(図表2)。また、上昇率上位30銘柄の多くは、サービス業、電気機器、情報・通信業、食料品、陸運業に分類され、内需関連銘柄の好調さが目立ちます。
以上より、年初から9月までは総じて内需のパフォーマンスが外需を上回り、9月以降は日経平均株価が急騰するなか、出遅れていた外需に買いが集中した傾向がうかがえます。これは、年初の米長期金利上昇、春先以降のタカ派的な米通商政策、夏場のトルコショックなどが内需選好の動きを促し、9月以降のこれらに対する過度な懸念の後退が、外需へのセクターローテーションを促したものと推測されます。
日本株一段高のカギを握るのは景気敏感銘柄で、本邦中間決算や米中経済動向には要注意
セクターローテーションが一時的にとどまり、投資資金が再び内需に向かえば、日経平均株価は伸び悩みます。そのため、ここからは、機械、化学、非鉄金属、鉄鋼などに分類される景気敏感銘柄の動きがポイントです。今月下旬から本格化する中間決算は重要イベントであり、日経平均株価が一段高となるには、これら銘柄の業績に裏付けられた株高が必要です。
また、景気敏感銘柄の株価上昇には、経済指標などで米国経済の堅調さが確認されること、中国経済の成長ペースが著しく鈍化しないこと、これらも要件となります。なお、銀行と自動車の一段のパフォーマンス改善には、国内長期金利の持続的な上昇見通しや、米自動車関税引き上げ懸念の大幅な後退が必要ですが、これらの実現には、今しばらく時間を要すると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(2018年10月5日)
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