ここからの日本株~続伸か一服か
市川レポート(No.562)ここからの日本株~続伸か一服か
- 株価上昇の持続性確認のため、株高がEPS主導によるものか、PER主導によるものかを検証する。
- 9月3日から19日までの株高は、PERの上昇でほぼ説明可能であり、期待先行の株高とみられる。
- 米中の対立は継続中で、期待先行での株一段高には要注意、まずは23,000円台で値固めか。
株価上昇の持続性確認のため、株高がEPS主導によるものか、PER主導によるものかを検証する
日経平均株価は9月19日、23,672円52銭で取引を終え、約8カ月ぶりの水準を回復しました。ただ、節目の23,000円を回復した後の上昇が急ピッチだったため、このまま24,000円台乗せを試しに行くのか、それとも、いったん調整するのか、見極めが難しいとの声も市場で聞かれます。そこで、今回のレポートでは、このところの日経平均株価の上昇について、簡単な要因分析を行います。
具体的には、日経平均株価を予想利益ベースの1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)に分け、どちらの要素が株価を押し上げているかを確認します。一般に、企業の業績予想が改善すれば、株価はEPSに主導される形で上昇し、また、投資家の間に株価の先高期待が広がれば、株価はPERに主導される形で上昇します。つまり、EPS主導の株高は「業績」を反映した株高、PER主導の株高は「期待」を反映した株高といえます。
9月3日から19日までの株高は、PERの上昇でほぼ説明可能であり、期待先行の株高とみられる
9月3日時点で、日経平均株価の終値は22,707円38銭、EPSは約1,733円39銭で、PERは13.1倍でした。そして、9月19日時点では、日経平均株価の終値が23,672円52銭、EPSは約1,735円52銭で、PERは13.64倍となりました(図表1)。この間の上昇幅は、日経平均株価が965円14銭、EPSは約2円13銭、PERは0.54倍でした。これをもとに要因分析を行うと、図表2の通りとなります。
すなわち、9月3日から19日までの日経平均株価の上昇幅965円14銭について、EPSの寄与度は約27円99銭、PERの寄与度は約937円15銭となり、日経平均株価の上昇は、PERの上昇でほぼ説明できます。3月期決算企業の中間決算が本格化するのは10月下旬であり、現時点では業績修正が少ないということもありますが、足元の株高は、投資家の期待先行によるところが大きいと推測されます。
米中の対立は継続中で、期待先行での株一段高には要注意、まずは23,000円台で値固めか
夏場に投資家心理を圧迫した主な材料として、①新興国通貨の下落、②チャート上の23,000円の上値抵抗線、③米通商政策に対する警戒感、が挙げられます。ただ、9月13日のトルコの大幅利上げで、トルコリラなど主要新興国通貨は落ち着きを取り戻し、日経平均株価は9月14日に終値ベースで23,000円を回復しました。このように、①と②の材料消化は、投資家心理の改善につながり、23,000円台乗せ後の上昇加速を正当化します。
一方、③について、米中貿易摩擦問題はまだ楽観できず、期待先行の株高は正当化しにくいところもあります。そのため、ここからの日経平均株価の続伸には、過熱感を伴う恐れがあり、注意が必要です。この先、期待先行の動きはいったん落ち着き、日経平均株価は米中の貿易協議をにらみながら、23,000円台での値固めを試す展開が予想されます。そして、中間決算で業績の上方修正が確認されれば、EPS主導で24,000円台乗せをうかがうという流れも期待できます。
(2018年9月20日)
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