日銀のETF買い入れは減額に向かうのか?
市川レポート(No.551)日銀のETF買い入れは減額に向かうのか?
- 日銀はTOPIXの前場の終値が、前日の終値から少なくとも0.3%超下がると、ETFの購入を実施。
- しかし、買い入れ額の変動を容認した7月の会合後、8月は0.5%超の下げまで購入は行われず。
- 日銀は株式市場が堅調地合いにある間は減額を意識するオペレーションを念頭に置いた可能性。
日銀はTOPIXの前場の終値が、前日の終値から少なくとも0.3%超下がると、ETFの購入を実施
日銀は7月30日、31日に金融政策決定会合を開催し、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置を決定しました。その際、ETFおよびJ-REITの買い入れ額については、「上下に変動しうる」という新たな方針が示されました。そこで今回のレポートでは、8月のETF買い入れ実績と、それ以前の実績を比較し、日銀のETF買い入れ姿勢に変化が生じたか否かを検証します。
日銀がETFの買い入れを行うのは、東証株価指数(TOPIX)の前場の終値が、前日の終値から一定程度、下落した日です。日銀は過去、下落率が1%を超えると買い入れていましたが、2015年からは0.2%程度の下げでも買い入れるようになり、2015年半ば以降は下落率に明確な基準はみられなくなりました。その傾向は現在でも続いており、2018年の年初からは、少なくとも下落率が0.3%を超える日に買い入れが行われています(図表1)。
しかし、買い入れ額の変動を容認した7月の会合後、8月は0.5%超の下げまで購入は行われず
そこで、8月1日から30日までにおける日銀のETF買い入れ実績を確認してみます。8月は15日と16日に下落率が0.4%を超えましたが、日銀は両日ともETFの買い入れを見送りました。ETF買い入れが行われたのは、8月10日と13日で、下落率はそれぞれ、0.56%、1.72%でした。したがって、8月は少なくとも下落率が0.5%を超えるまで、買い入れが行われなかったことになります。
なお、日銀は現在、ETFの保有残高が年間約6兆円ペースで増加するよう買い入れを行っています。6兆円の目標は、2016年7月29日の政策決定会合で導入されました。そこで、過去、年間の買い入れ総額が目標に達していたかを確認してみます。設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETFを含んだ買い入れ総額は、2016年8月から2017年7月までの1年間で約6兆527億円、2017年8月から2018年7月までの1年間で約6兆2,196億円となり、目標に達していました。
日銀は株式市場が堅調地合いにある間は減額を意識するオペレーションを念頭に置いた可能性
8月のETF買い入れ実績を受けて、市場では日銀がこの先、買い入れ額を減少させていくのではないかとの見方が浮上しています。実際、8月1日から30日までの買い入れ総額は約1,682億円でしたが、2016年8月から2018年7月までの平均月間買い入れ額は約5,113億円ですので、8月の実績は平均よりもかなり少額といえます。ただ、基本的に買い入れ額は月ごとに振れが大きく、2017年10月も約1,670億円でした。
そこで、TOPIXの前場の終値が前日の終値から下落した月間営業日数と、月間のETF買い入れ額の関係をみると、下落した日が多いと月間の買い入れが増え、少ないと減る動きがおおよそ読み取れます(図表2)。これを踏まえると、確かに8月の買い入れ額は少ないように思われます。そのため、日銀は株式市場が堅調地合いにある間は減額を意識しつつも、株価急落時には即座に買い入れるというオペレーションを念頭に置くようになったのではないかと推測されます。
(2018年8月31日)
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