マーケット自身が示す値ごろ感

2026/03/06
  • 「上昇100日下げ3日」を地で行く展開
  • イラン攻撃まで相場は楽観的すぎただけ
  • 有事の株売りは続かない

「上昇100日下げ3日」を地で行く展開

僕の新刊『株はずっと上がるもの‐誰も書けなかった株式投資の真実』が日経BP社より来週13日(金)に発売される。「株はずっと上がるもの」というタイトルの書籍の発売が、米国のイラン攻撃で株価が暴落している最中というのも、絶妙のタイミングである。

絶妙というのは、グッド・タイミングだという意味である。同書にはこう書いた。

株は上がるものだとは言いましたが、当たり前ですが正確には上がったり下がったりします。そして下がるときは急激に下がることも多くあります。相場格言に「上昇100日下げ3日」というものがあります。上がるときは、じりじりゆっくりと上がっていって、下がるときはドーンと、それまでの上昇分をあっという間に吹き飛ばすような激しい下げになることの例えです。そうした暴落を経験すると、どうしても怖くなって株式投資をやめてしまう人がいますが、それでは株式投資でリターンを得ることはできません。(『株はずっと上がるもの‐誰も書けなかった株式投資の真実』より引用)

まさに今回、「上昇100日下げ3日」を地で行くような展開となった。イラン攻撃を受けた今週の週初3日間で日経平均の下げ幅は4600円にも及び、総選挙の自民党圧勝で跳ね上がった分を帳消しにした。

しかし、そもそも選挙で上がった分が行き過ぎだった感があるので、現在の相場水準は適正ではないかと思う。

イラン攻撃まで相場は楽観的すぎただけ

僕は2月6日付で『乱気流にシートベルト着用サイン点灯』というレポートを出し、「自民党が仮に大勝して、それで相場が上がる場面があるなら、そこはいったん「売り場」ととらえたほうが無難だ、と述べた。

週間相場展望では、2月16日付『日経平均の今週の予想レンジは5万6000円-5万8500円』で「不安材料は地政学リスクだ。トランプ米大統領は13日、イランとの核問題を巡る交渉が合意しなかった場合に備え、空母打撃群の追加派遣を指示したと明らかにした。トランプ氏は交渉期限について今後1ヶ月をめどにすると表明しており、今後は中東をめぐる緊張が高まる」と注意喚起を行い、さらに翌週2月24日付『日経平均の今週の予想レンジは5万6000円-5万7500円』では、「イラン情勢が緊迫している。仮に米軍による武力行使となった場合、マーケットには衝撃が走り、それなりの下落を見せるだろう」と一段とレベルを上げて警鐘を鳴らした。

別に僕が特別な情報に基づいてアラートを発していたわけではない。普通に報道に接していればイラン攻撃がかなりの確度で実行されるということは、誰の目にも明らかだったと思う。わからないのは、今回、相場がなぜこれほどまでに楽観的でいたのかだ。それは理解に苦しむ。モメンタム主導というか、勢いに乗ってそのまま高値追いを続けてしまった、というプリミティブな話なのだろう。

重要なのは、これも相場の一面であるということだ。市場は間違う。そこまで賢いものではない。

だから、冷静に情報を収集し分析すれば、リスクを避けることができる。今回は非常に良いそのケーススタディになるだろう。

話を戻すと、現在の相場水準は適正ではないかという点だ。市場はしばしば間違えるし、そこまで賢いものではないとはいったが、一方で市場参加者の「総意」をあらわすという機能は優れた能力である部分もある。いわゆる「集合知」である。「相場のことは相場に聞け」という言葉があるが、市場の動き自体が「居心地のよい水準」≒適正水準を示唆することがある。

まさに今日の動きがそれだろう。昨日のNYの相場を見たら、また一段安も免れ得ないと思った人もいたと思うが、ふたを開けてみれば下げ渋る展開だ。昨日の「寄り引け同値の十字足」を境に、今日は陽線を引いて、目先底入れの機運が出ている。

有事の株売りは続かない

日経の「ウォール街ラウンドアップ」にも「有事の株売りいつまで」という記事があったが、過去のケースでは有事の株売りは続かないというデータが示されている。

なぜ「有事の株売りは続かない」のか。まず、市場は「不確実性」を嫌う。事が発生した直後は情報不足からリスクオフになりがちだが、しかし戦況が見えてくると徐々に落ち着いてくる。

そして次に市場は気付く、というか、思い出す。戦争は経済活動を完全には止めないということを。企業利益は、経済の重要な要素、すなわち消費、投資、技術等で決まるため地政学とは切り離されやすい。原油価格は重要な要素だが、あくまでも「ひとつの」要素に過ぎない。しかも、現在は原油先物価格という、非常に投機的な市場での初期反応として原油価格が高騰しているだけで、最終的に企業業績にどのような影響があるかはまだわからない。

なので、いま相場は「不透明感を嫌ってのポジションを落とす」という初期反応を終えて、落ち着きどころを探る展開に入っているという状況だ。中東情勢に予断は禁物ながら、早晩、停戦に至るだろう。ただし、それで一気に日本株相場が前の高値まで戻るかは疑問である。繰り返すが、そもそも選挙で跳ねたところは行き過ぎだったと思うからだ。

日経平均の5万6000円台はテクニカル的にもバリュエーション面でも「居心地のよい水準」≒適正水準だろうと思う。

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広木隆「ストラテジーレポート」   マネックス証券株式会社
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