足元のマクロ環境と日本株の材料整理
市川レポート(No.538)足元のマクロ環境と日本株の材料整理
- 各国企業の景況感全体を踏まえると、少なくとも足元のマクロ環境を、過度に悲観することはない。
- 日銀は政策微調整の可能性も緩和は維持、FOMCは無風通過で、日本株への影響は限定的。
- 決算も悪くはないが、日本株に強気となるには米通商政策の着地をもう少し見通せることが必要。
各国企業の景況感全体を踏まえると、少なくとも足元のマクロ環境を、過度に悲観することはない
今回のレポートでは、足元のマクロ環境と日本株の材料について整理します。はじめに、マクロ環境から確認していきます。各国企業の購買担当者景気指数(PMI)は、今年の2月から3月にかけて大きく低下し、企業景況感の悪化を示唆しました(図表1)。製造業PMIは、その後も低下傾向が続いていますが、背景には米中貿易摩擦問題に対する強い警戒があると推測されます。
しかしながら、非製造業PMIは4月以降、大きく改善しており、総合ベースでは持ち直しています。引き続き、製造業PMIの動向を見極めることは必要ですが、企業全体の景況感を踏まえると、少なくとも足元のマクロ環境を過度に悲観する必要はないと考えています。そのため、この先、マクロ環境の悪化に起因して金融市場がリスクオフ(回避)に傾き、日本株が大きく調整する公算は、現時点で小さいとみています。
日銀は政策微調整の可能性も緩和は維持、FOMCは無風通過で、日本株への影響は限定的
次に、個別の材料を整理します。金融政策について、日本では7月30日、31日に日銀金融政策決定会合が開催されます。市場では今回、緩和長期化による副作用軽減のため、ETF買い入れの配分変更や、指値オペの水準引き上げなど、技術的な政策微調整が行われるとの見方が強まっています。ただし、基本的な緩和方針は維持され、日本株への影響は限定的と考えます。
米国では、7月31日、8月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。今回は、声明の発表だけで、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見なども予定されていません。したがって、政策は据え置き、声明にも大きな変更はなし、との見方が大半となっており、無風通過が予想されます。そのため、ドル円や日本株にも材料にはなりにくい会合と思われます。
決算も悪くはないが、日本株に強気となるには米通商政策の着地をもう少し見通せることが必要
こうしたなか、米中貿易摩擦問題は、やはり注目度の高い材料です。トランプ米政権は7月25日、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談し、自動車を除く工業製品の関税撤廃などに向けた貿易交渉を開始することで合意しました(図表2)。これ以降、貿易問題に対する市場の懸念が少し和らいだように思われます。ただ、米国は追加的な対中制裁関税や、自動車の輸入制限などの検討を続けており、これらが日本株の重しになっています。
日本では、3月決算企業の4-6月期決算発表が始まっています。まだ序盤ですが、今のところ全体としては悪くない印象です。ただ、ファナックやコマツなど、先行きに慎重な姿勢を示す企業も多く、市場は強気になりきれていません。そのため、日経平均株価の23,000円台定着は、米通商政策の落としどころがもう少しはっきり見えてくるまで、待つ必要があるとみています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(2018年7月30日)
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