ドル円がドル高・円安で反応した理由
市川レポート(No.530)ドル円がドル高・円安で反応した理由
- 7月11日は、貿易問題を巡る米中の対立激化で株安が進むなか、ドル円はドル高・円安で反応。
- 背景には、制裁関税で中国の資源需要減→商品相場軟化→資源国通貨安→ドル高の動きも。
- 110円を中心にレンジ推移が続くとみるが、年内115円程度までのドル高・円安は想定の範囲内。
7月11日は、貿易問題を巡る米中の対立激化で株安が進むなか、ドル円はドル高・円安で反応
ドル円は、日本時間7月11日の早朝、1ドル=111円20銭付近で推移していましたが、トランプ米政権による2,000億ドル分の対中制裁関税リストの公表を受け、110円77銭水準までドル安・円高が進行しました。ドル円は、東京市場で111円台を回復した後、底堅い動きが続き、ニューヨーク市場終盤にかけてドル高・円安の動きが加速すると、一時112円17銭水準をつけました。
7月11日の主要国の株式市場は、米中貿易摩擦問題が重しとなり、総じて軟調に推移しました。これまで市場では、「貿易問題を巡る米中の対立激化→株安→ドル安・円高」という解釈が一般的でした。しかしながら、この日は「貿易問題を巡る米中の対立激化→株安→ドル高・円安」という動きがみられました。ドル円がこれまでと違った反応を示した理由について、以下考えてみます。
背景には、制裁関税で中国の資源需要減→商品相場軟化→資源国通貨安→ドル高の動きも
7月10日から11日までの為替市場の動きをみると、対ドルで資源国通貨の下落が目立っています(図表1)。一方、商品相場に目を向けると、ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、同期間で約5.0%下落しており、ロンドン金属取引所(LME)で取引されている6種類の工業用金属で構成されるLMEX指数も、約2.5%下落しています。
つまり、資源国通貨売りの背景には、軟調な商品相場があり、さらに、軟調な商品相場の背景には、米国の制裁関税で中国の資源需要が低迷するとの見方があるように思われます。したがって、「米中対立激化→中国の資源需要低迷→商品相場軟化→資源国通貨安→相対で(円を含めた幅広い通貨で)ドル高」という動きが、7月11日のドル高・円安の一因とみられます。
110円を中心にレンジ推移が続くとみるが、年内115円程度までのドル高・円安は想定の範囲内
なお、石油輸出国機構(OPEC)は7月11日、OPEC非加盟国からの原油供給が来年は5年ぶりの大幅増になるとの見方を示しました。これが同日の原油の急落につながり、ドル高・円安の動きをやや大きくしてしまった面もあるため、少し注意が必要です。それでも、米中貿易摩擦のエスカレートでドル高・円安という反応は、商品相場と資源国通貨の動き次第で、今後もみられる可能性があります。
また、最近市場で注目されているドル円のチャートが図表2です。過去3年のドル安・円高のトレンドラインを突破したことで、ドル買い・円売りに弾みがついたと解釈することもできます。弊社はドル円について、110円を中心にレンジ推移が続くと予想していますが、年内は115円程度までドル高・円安に振れる余地があると考えており、112円台の回復に違和感はありません。
(2018年7月12日)
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