米長期金利上昇とドル円相場

2018/04/26

 市川レポート(No.497)米長期金利上昇とドル円相場

  • 米長期金利上昇でドル買いが優勢に、3月FOMCで安心感が広がり今回は市場の混乱に至らず。
  • 米経済の強さを反映した長期金利の上昇であり、現状程度なら新興国市場への影響は限定的。
  • リスク要因への懸念後退なら、ドル円は110円~115円のレンジ入りを試す動きが強まる可能性。

米長期金利上昇でドル買いが優勢に、3月FOMCで安心感が広がり今回は市場の混乱に至らず

4月に入り、米10年国債利回りの上昇傾向が顕著となるなか、為替市場ではドルが対主要通貨で買い優勢の展開となっています。年初に米10年国債利回りが上昇した際は、市場に米利上げペースが加速するとの懸念が強く、米国をはじめとする主要国の株価は1月下旬から2月上旬にかけて大きく下落しました。しかしながら、今回は市場に大きな混乱はみられていません。

これは、米金融当局の政策方針によるところが大きいと思われます。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、3月に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、緩やかなペースで利上げを継続する従来の方針を繰り返しました。これが市場の安心感につながり、今回は米長期金利が上昇しても、利上げ加速の懸念はみられず、リスクオフの動きには至っていません。

米経済の強さを反映した長期金利の上昇であり、現状程度なら新興国市場への影響は限定的

米10年国債利回りは、4月に入り、昨日まで約0.29%上昇しました。内訳をみると、将来の物価上昇見通しを反映した「期待インフレ率」の上昇分が約0.12%、米国の経済成長見通しを反映した「実質金利」の上昇分が約0.17%となっています(図表1)。つまり、米国の長期金利上昇は、経済の強さをより反映した動きであり、為替市場でのドル高は、これに素直に反応したものと考えられます。

なお、一般に米長期金利が上昇し、ドルが上昇すると、新興国通貨は相対的に下落しやすくなります。その結果、新興国の資金流出、株安、景気減速への懸念が強まります。しかしながら、新興国の景気は東南アジアなどを中心に総じて底堅く、MSCI新興国株価指数は、3月30日から4月25日まで約1.2%上昇しています(現地通貨建てトータル・リターン)。そのため、現状程度の米長期金利上昇であれば新興国市場への影響は限定的と思われます。

リスク要因への懸念後退なら、ドル円は110円~115円のレンジ入りを試す動きが強まる可能性

ドル円は、日足一目均衡表において、雲上限を上抜けつつあります(図表2)。明確に上抜けが確認された場合、ドル円の110円台回復は十分視野に入ってきます。しかしながら、米中貿易摩擦問題や朝鮮半島情勢については、まだ楽観できる状況にはありません。そのため、今後の動向次第では、再びドル売り・円買いが優勢になることも十分に考えられます。

ドル円は、これまで105円~110円で推移する時間帯が多くなると予想していましたが、ここにきて、米長期金利の上昇が、素直にドル買いに結び付くようになりました。そのため、米中貿易摩擦問題や朝鮮半島情勢に対する懸念が、大きく後退するような状況となれば、ドル円は次第に110円~115円のレンジ入りを試す動きが強まるのではないかとみています。

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(2018年4月26日)

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