EPS主導の株高とPER主導の株高

2018/02/01

市川レポート(No.473)EPS主導の株高とPER主導の株高

  • EPSが主導する株高は「業績」を反映した株高、PERが主導する株高は「期待」を反映した株高。
  • 日経平均株価が23,000円台を回復したのはEPS主導、24,000円台の回復はPER主導だった。
  • 今回の株価下落は行き過ぎた期待の修正、PERの低下により好業績銘柄には値ごろ感が強まる。

 

EPSが主導する株高は「業績」を反映した株高、PERが主導する株高は「期待」を反映した株高

「EPS(Earnings Per Share)」とは「1株あたり利益」のことで、一般に今期の予想利益を発行株数で割ったものになります。「PER(Price Earnings Ratio)」とは「株価収益率」のことで、株価を1株あたり利益で割ったものになります。PERは、株価が1株あたり利益の何倍まで買われているかを示すことになるため、株価が利益水準に対し、割高か割安かを判断する尺度として利用されています。

EPSとPERを掛け合わせると、現状の株価水準が得られます。したがって、例えば、好決算などで今期の予想1株あたり利益が上昇すると、株価はEPSに主導される形で上昇します。また、投資家の間に株価の先高観が広がると、株価はPERに主導される形で上昇します。つまり、EPS主導の株高は「業績」を反映した株高、PER主導の株高は「期待」を反映した株高といえます。

 

日経平均株価が23,000円台を回復したのはEPS主導、24,000円台の回復はPER主導だった

そこで、昨年秋からの日経平均株価の上昇は、EPSとPER、どちらの主導によるものかを検証してみます。日経平均株価は、2017年10月27日の終値で22,000円台を回復し、2018年1月4日の終値で23,000円台を回復しました。この間の日経平均株価の上昇は、EPSの上昇で8割説明することができます(図表1)。つまり、これは3月期決算企業の好調な4-9月期決算(中間決算)を受けた、「業績」を反映した株高といえます。

なお、2018年1月4日の終値で23,000円台を回復した日経平均株価は、そのわずか12営業日後の1月23日の終値で24,000円台を回復しました。この間の日経平均株価の上昇は、PERの上昇で8割説明することができます(図表1)。年初は業績修正が少ないという季節性も影響していると思われますが、かなり「期待」が先行する形で、株価を押し上げていたと推測されます。

 

今回の株価下落は行き過ぎた期待の修正、PERの低下により好業績銘柄には値ごろ感が強まる

日経平均株価は年初、EPSの上昇という増益の裏付けがないまま、1月23日の終値で24,000円を回復しました。このままでは株価は割高です。このような場合、この先の展開は2つのケースが考えられます。1つは、3月期決算企業の4-12月期決算で、業績の改善傾向が確認され、EPSの上昇で期待先行の株高が正当化されるケースです。ただ決算の前半のピークは1月31日で、EPSが直ちに上昇することは困難でした。

もう1つは、行き過ぎた期待に修正が入り、PERが低下し、株安となるケースです。今回はこれに該当したと思われ(図表2)、日経平均は1月24日から6営業日連続で下落しました。ただ、日経平均株価のPERは15倍程度に落ち着きましたので、決算後半に向けて、好業績銘柄には値ごろ感が強まったと思われます。現在、日経平均株価が織り込む今期の増益は10%程度です。これが今後、決算発表を通じて12%程度に上方修正され、PERも15.5倍程度に切り上がれば、日経平均株価は計算上、24,000円台を回復することになります。

 

180201

 

(2018年2月1日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ