日本株の売り手と買い手
市川レポート(No.468)日本株の売り手と買い手
- 2017年は個人が約5.8兆円と大幅に売り越した一方、海外投資家の買い越し額は1兆円未満。
- 最大の買い越し額は自己(証券会社などの自己勘定取引)の約6兆円で、個人の売りを吸収。
- 2018年も個人の売りと自己の買いを予想、カギを握る海外投資家は、買い余力十分ありとみる。
2017年は個人が約5.8兆円と大幅に売り越した一方、海外投資家の買い越し額は1兆円未満
東京証券取引所は1月10日、投資部門別の日本株売買状況について、2017年通年のデータを公表しました。それによると、自己(証券会社などが自己勘定で行う取引)が6兆321億円の買い越し、委託(証券会社などが顧客の委託に基づいて行う取引)が5兆8,856億円の売り越しで、総計は1,465億円の買い越しとなりました。なお、委託は顧客別に、法人、個人、海外投資家、証券会社に分類されます。
このうち2017年に売り越しとなったのは、法人、個人、証券会社でした。売り越し額は順に、4,135億円、5兆7,934億円、4,319億円で、個人の売り越し額が突出しています。そして、株式市場でその動向が常に注目される海外投資家は、7,532億円の買い越しにとどまりました。また、法人はさらに、投資信託、事業法人、その他法人等、金融機関に分類されます。
最大の買い越し額は自己(証券会社などの自己勘定取引)の約6兆円で、個人の売りを吸収
法人の内訳をみると、投資信託が1兆435億円の売り越し、事業法人が1兆2,325億円の買い越し、その他法人等が6,047億円の買い越し、金融機関が1兆2,073億円の売り越しとなりました。投資信託は個人保有が多いとみられることから、委託における個人の売り越しとあわせて、個人は2017年に投資信託や現物株を6兆8,369億円売り越したと考えられます。
なお、事業法人による1兆2,325億円の買い越しは、自社株買いなどによるものと推測されます。また、年金基金の動きを示すとされる信託銀行は、金融機関のなかに分類されますが、2017年は939億円の買い越しにとどまりました。以上より、2017年に日本株を大幅に買い越したのは自己であり、前述の6兆321億円の買い越しが、投資家の売りを吸収したことになります。
2018年も個人の売りと自己の買いを予想、カギを握る海外投資家は、買い余力十分ありとみる
なお、自己には、日銀による株価指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れが含まれるとみられます。日銀は現在、ETFの保有残高が年間約6兆円に相当するペースで増加するように買い入れを行っており、2017年のETF購入総額は約5.9兆円でした。結果的に、自己の買い越し額に近い数字になっていることが分かります(図表1)。
弊社は2018年の日本株は上昇を予想していますが、個人は引き続き逆張り(相場の下落局面で買い、上昇局面で売る投資手法)選好で、主要な売り手になると思われます。また、日銀のETF買い入れも当面維持され、自己の買い越し要因になると考えます。日本株のカギを握るのは、売買代金シェア約6割の海外投資家です(図表2)。2016年は約3.7兆円を売り越し、2017年は7,532億円の買い越しにとどまっていますので、海外投資家に買い余力はまだ十分あるとみています。
(2018年1月15日)
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