日本株を巡る2つの材料~地政学リスクと企業決算
市川レポート(No.425)日本株を巡る2つの材料~地政学リスクと企業決算
- 足元の地政学リスクは、米国側が差し迫った脅威を否定、市場は徐々に落ち着きを取り戻そう。
- 一方、日本では4-6月期決算が好調、良好な進捗率や業績見通しの上方修正が多くみられる。
- ただし、投資マネーは業種の入れ替えにとどまる、日本株上昇期待は残るがしばらく小康状態か。
足元の地政学リスクは、米国側が差し迫った脅威を否定、市場は徐々に落ち着きを取り戻そう
日経平均株価は8月9日、米朝の軍事衝突を警戒する動きから大幅続落となり、前日比257円30銭安の19,738円71銭で取引を終えました。下げを主導した銘柄は図表1の通りで、株価水準の高い値がさ株や、時価総額の大きい大型株が目立ちます。日経平均株価を構成する225銘柄のうち、この10銘柄の下落だけで、9日の下げ幅の5割強である134円12銭に相当します(図表1)。
今回の地政学リスクの高まりは、トランプ米大統領が北朝鮮に対し武力行使を示唆する強い口調で警告したことや、北朝鮮側が攻撃対象にグアムという具体名を出してきたことなどが背景にあります。しばらく米朝両国の動きに注意は必要ですが、ティラーソン米国務長官は8月9日、北朝鮮に関して差し迫った脅威を否定しており、市場も徐々に落ち着きを取り戻すのではないかと思われます。
一方、日本では4-6月期決算が好調、良好な進捗率や業績見通しの上方修正が多くみられる
さて、改めて3月期企業の4-6月期決算に目を向けると、今回は以下3つの特徴があげられます。すなわち、①世界的に緩やかな景気回復と過度な円高リスクの後退を背景とし、製造業中心に業績持ち直しの動きがみられること、②年間の利益計画に対する進捗率が総じて良好であること、③通期の業績見通しを上方修正する動きが多くみられることです。
東証33業種について、決算発表が本格化してから直近までの騰落率をみると(図表2)、「空運業」、「非鉄金属」、「鉄鋼」が好調です。業種別指数の押し上げに寄与しているのは、空運業では日本航空やANAホールディングス、非鉄金属では住友金属鉱山や古河電気工業、鉄鋼指数ではJFEホールディングスや新日鐵住金で、おおむね好決算銘柄が素直に買われています。
ただし、投資マネーは業種の入れ替えにとどまる、日本株上昇期待は残るがしばらく小康状態か
一方、「ガラス・土石製品」、「証券・商品先物取引」、「海運業」は低調です。8月4日付レポートでお話しした通り、ガラス・土石製品は、主要企業の決算はまずまずの内容でしたが、いったん材料出尽くしで、売りに押されたとみられます。また、今年度に入り、決算発表が本格化するまで好調だった「電機機器」、「化学」、「情報・通信業」なども、決算は好調ながら、足元では低調なパフォーマンスとなっています。
このように、投資マネーの動きが業種の入れ替えにとどまっているため、日本株の上値が重くなっているものと推測されます。相場全体の押し上げには、海外などからの新規マネーの流入が必要となりますが、国内の企業業績や景気見通しは悪くなく、相応に期待はできると考えます。ただ、米国およびユーロ圏では、秋口にも金融政策の正常化に向けた動きが予想されており、この影響を見極めたいと考える投資家も多いと思われます。またすでに夏季休暇シーズンに入っていることも勘案すれば、目先の日本株は小康状態が続く可能性があると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(2017年8月10日)
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