次期日銀総裁候補の顔ぶれ
市川レポート(No.418)次期日銀総裁候補の顔ぶれ
- 財務省出身では森金融庁長官、本田駐スイス大使、日銀出身では中曽副総裁、雨宮理事。
- 学者出身では伊藤コロンビア大教授、ただ市場では、日銀内部から任命されるとの予想が多い。
- 誰が新総裁でも出口戦略の議論が焦点となる可能性、早い段階で政府との協議が期待される。
財務省出身では森金融庁長官、本田駐スイス大使、日銀出身では中曽副総裁、雨宮理事
日銀の黒田東彦総裁は2018年4月8日に5年の任期満了を迎えます。市場では、次の日銀総裁に誰が任命されるか、注目が集まっています。日銀総裁および副総裁の任命については、まず政府が人事案を衆参両院それぞれの議院運営委員会に提出し、衆参両院の本会議で承認を得た上で、内閣が任命するという流れになります。なお、黒田総裁の人事案が国会に提出されたのは2013年2月28日でした。
弊社では、今回の人事案は、年末から年明けに提出される可能性が高いと考えています。そこで、次期日銀総裁として有力視されている候補者の顔ぶれを、以下、確認していきます(図表1)。財務省出身の候補者として、森信親金融庁長官や本田悦朗駐スイス大使らの名前が、また、日銀出身の候補者として、中曽宏副総裁や雨宮正佳理事らの名前が、それぞれあがっています。
学者出身では伊藤コロンビア大教授、ただ市場では、日銀内部から任命されるとの予想が多い
学者出身の候補者としては、伊藤隆敏米コロンビア大学教授らの名前もみられますが、これらの候補者以外にも、黒田総裁が続投するケースも考えられます。なお、日銀総裁の後任人事に関する予想が図表2に示されています。これは、株式会社QUICKが、証券会社や銀行など、外為市場関係者を対象に、毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の3月調査から一部引用したものです。
図表2の通り、外為市場関係者のほとんどが、次期総裁は日銀出身者(黒田総裁の再任を含む)になるとみています。この背景には、金融政策の一貫性が保たれるためには、現在の総裁、副総裁、理事のなかから次期総裁が選ばれることが最も好ましいという考えがあるように思われます。実際、図表2の上位3名から次期総裁が任命された場合、市場は落ち着いた反応を示すと予想されます。
誰が新総裁でも出口戦略の議論が焦点となる可能性、早い段階で政府との協議が期待される
もちろん、他の候補者が任命された場合でも、市場との対話を通じて、少なくともしばらくは現行の政策方針が維持されるという見方が広がれば、市場に大きな混乱はないと考えます。なお、政策の一貫性が保たれることは重要な点ですが、それよりも重要なのは、「出口戦略」への備えであり、誰が新総裁となっても、任期5年の間に出口戦略の議論が焦点となる可能性があります。
出口戦略では、長短金利操作の水準が、引き上げられることになります。なお、日銀が保有する国債の利回りが上昇(価格が低下)しても、会計処理は「償却減価法」ですので、キャピタルロスは計上されません。ただ、利上げは日銀当座預金の付利金利の引き上げによって行われるため、利払い費用が保有国債からの利息収入を上回ると、日銀に損失が発生します。新総裁には、損失発生時の対応を含めた出口戦略に関し、早い段階で政府と協議を進めておくことが期待されます。
(2017年7月18日)
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