トランプ米大統領の議会演説後は株高か株安か

市川レポート(No.360)トランプ米大統領の議会演説後は株高か株安か

  • 議会演説の注目は税制改革だが、NYダウはすでに連日の最高値更新で大型減税を織り込む。
  • 大規模な減税やインフラ投資などの基本方針は不変とみるも、具体策に欠ければいったん株安か。
  • 3月以降の予算規模と財政スケジュールに大きな失望がなければ演説後に株安となっても一時的。

議会演説の注目は税制改革だが、NYダウはすでに連日の最高値更新で大型減税を織り込む

トランプ米大統領は2月28日、米上下両院合同本会議で施政方針について演説を行います。米大統領が年初に行う演説は「一般教書演説」と呼ばれますが、就任1年目の場合は米国の現状を議会に報告するという一般教書の憲法上の定義にそぐわないため、単に「議会演説」と言われています。今回は、税制改革やインフラ投資などの内政や外交全般についてどれだけ具体的な内容が示されるのかが焦点となります。

特に市場の関心が高いのは税制改革です。トランプ米大統領は2月9日、米航空大手首脳とホワイトハウスで会談し、2、3週間以内に「税に関する驚くべき発表」をすると述べました。この発言を受けてダウ工業株30種平均は上昇基調を強め、2月9日から24日まで30年ぶりとなる11営業日連続で最高値を更新しました。市場はすでに大型減税の実施を織り込んでいるように見受けられます。

大規模な減税やインフラ投資などの基本方針は不変とみるも、具体策に欠ければいったん株安か

トランプ米大統領は議会演説において、従来通り大規模な減税とインフラ投資の政策を示すと思われます。法人税制改革については、就任100日行動計画で、①連邦法人税率を35%から15%へ引き下げる、②企業が海外資金を米国に戻す際の税率は10%とする、③企業の海外移転を阻止する関税を賦課するなどの案を示しています(図表1)。政策の基本方針に変更がないことが確認されれば、それ自体は市場にとって悪くない話です。

ただそれだけでは新味がなく、議会演説では少なくとも更なる具体策への言及がない限り、市場はいったん株安で反応する恐れがあります。また就任100日行動計画では、法人税制改革の他にも、民間の投資減税拡大や官民連携による10年間で1兆ドルのインフラ投資、家計向け所得税の引き下げと税制の簡素化も併せて立法措置を講じるとしています。これらも市場の関心が高い項目です。

3月以降の予算規模と財政スケジュールに大きな失望がなければ演説後に株安となっても一時的

なお法人税制改革に関しては、トランプ米大統領案と議会共和党案とでは異なる点も多くみられ、本格的な調整にはまだ時間を要すると思われます(図表2)。そして米議会によれば、予算教書が3月13日にもホワイトハウスから提出される見通しです。以上を踏まえると、今回の議会演説では、まだ税制改革の全体像が細部にわたって示される段階にはないとみられ、米株や日本株を大きく押し上げるまでには至らない可能性があります。

3月以降は、税制改革より優先事項とされるオバマケア代替法案の早期成立も注目点ですが、予算教書と米議会の予算決議案の詳細を比較し、2018年度の予算規模と財政政策のスケジュール感を見極めることが重要と考えます。これらについて大きな懸念が生じなければ、議会演説後に市場がいったん株安で反応しても、その動きは一時的なものにとどまると思われます。

170227図表1 170227図表2

 

 (2017年2月27日)

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