日本株~ここからの注目点

市川レポート(No.326)日本株~ここからの注目点

  • 期待先行の株高は時間の経過と共に正当化が困難に、12月入り後のトランプ相場は小休止も。
  • ただ日本企業の業績見通しは改善しつつあり、トランプ相場一服でも上昇トレンドは維持されよう。
  • トランプ政策は期待が大きい分、失望が広がった場合は要注意、米通貨政策の方針も注目材料。

期待先行の株高は時間の経過と共に正当化が困難に、12月入り後のトランプ相場は小休止も

日経平均株価は12月1日、8年ぶりとなる石油輸出国機構(OPEC)の減産合意や、114円台後半までのドル高・円安の進行を受け、取引時間中に一時18,746円28銭の高値をつけました。11月9日の安値が16,111円81銭でしたので、日経平均株価は1カ月足らずで2,600円超上昇したことになります。今回のレポートでは、すでに大きく水準を切り上げている日本株について、ここから注目すべき点を考えます。

日経平均株価急騰の背景には、トランプ次期米大統領の政策への「期待」があり、米国の株高や長期金利の上昇、そしてドル高を好感した動きと解釈できます。しかしながら「期待」だけで株高を正当化することは、時間の経過と共に難しくなります。また一般には、月替わりを機に相場のテーマが変わることがあり、休暇入りの市場参加者が増える12月にトランプ相場が一服する可能性もあると考えます。

ただ日本企業の業績見通しは改善しつつあり、トランプ相場一服でも上昇トレンドは維持されよう

ここで日本企業の業績見通しを確認します。東証株価指数(TOPIX)のリビジョン・インデックスをみると、足元でプラス圏に浮上していることが分かります(図表1)。これはTOPIX構成銘柄のうち、業績予想を上方修正した銘柄の比率が増えてきたことを意味します。したがって日本企業の業績見通しについては、為替市場での円安進行という追い風もあり、あく抜け感が出始めているように思われます。

次に海外投資家の日本株売買状況を確認します。東京証券取引所のデータによれば、海外投資家は米大統領選挙(11月8日)が行われた11月第2週(11月7日~11日)から第4週(11月21日~25日)まで、3週続けて日本株を買い越しています。これはすなわち、海外勢が日本市場に戻り始めていることを示唆しています。以上を踏まえると、12月にトランプ相場が一服しても、日本株の上昇トレンドが崩れるには至らないと思われます。

トランプ政策は期待が大きい分、失望が広がった場合は要注意、米通貨政策の方針も注目材料

ただ注意すべきはトランプ次期大統領の政策に対する市場の「期待」が極めて大きいことです。そのため今後、何らかのきっかけで政策に「失望」が広がった場合、トランプ相場の修正に伴い、円高進行や日本株下落の度合いが比較的大きくなる恐れがあります。またムニューチン次期米財務長官は、通貨政策の明確な方針を示していませんが、過度なドル高を牽制することとなれば、ドル円の変動を通じて日本株も影響を受けると思われます。

なおイタリアでは12月4日、上院改革の国民投票が実施されます。可決なら市場は好感すると思われますが、否決なら政局への不透明感が強まり、市場が動揺する公算は大きいと考えます。しかしながらイタリアの政局不安定化は、直ちに世界的な金融危機の発生につながるものではありません。そのため市場の動揺も短期間でおさまる可能性があり、過度に悲観する必要はないとみています。

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 (2016年12月2日)

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