激戦となった米大統領選挙

市川レポート(No.320)激戦となった米大統領選挙

  • 米大統領選挙は予想外の大接戦となり、東京市場は株安、円高などリスクオフで反応する展開。
  • 市場はトランプ候補の極端な保護主義政策を嫌気し、短期的に不安定な状態が続くと思われる。
  • 議会の牽制で現実的な方向に政策が修正されるなら、市場は次第に落ち着きを取り戻すとみる。

米大統領選挙は予想外の大接戦となり、東京市場は株安、円高などリスクオフで反応する展開

11月8日に投票が行われた米大統領選挙は予想外の大接戦となりました。開票は日本時間11月9日の朝方から始まりましたが、トランプ候補優勢の報道が伝わるにつれ、東京市場は株安、債券高、円高のリスクオフ(回避)で反応しました。午後3時時点でも選挙結果は判明せず、日経平均株価は前日比919円84銭安の16,251円54銭で取引を終了、ドル円は日中一時101円20銭水準までドル安・円高が進行しました(図表1)。

夕刻になってトランプ候補が過半数の選挙人を獲得したことで勝利する見通しとなりました。トランプ候補の政策のうち、金融市場が最も懸念するところは、極端な保護主義政策です。そのため今後、貿易政策や移民政策に関するトランプ候補の発言には特に注意が必要で、過度に内向きな見解が示された場合、金融市場はリスクオフで反応する展開がしばらく続くと予想されます。

市場はトランプ候補の極端な保護主義政策を嫌気し、短期的に不安定な状態が続くと思われる

短期的には金融市場の不安定な状態が続くと思われますので、米連邦準備制度理事会(FRB)は12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送る可能性が高いと考えます。この結果、米長期金利は低位での推移が続き、為替はドル安方向に振れやすくなるとみます。ドル円は節目の100円でのサポートが見込まれますが、割り込んだ場合は、6月24日につけた99円02銭水準が意識されます。

なお連邦議会選挙では、下院は予想通り共和党が多数党となり、上院も共和党が接戦を制する結果となりました。そのため上下院にはトランプ候補の極端な政策に対する牽制機能が期待されます。議会を通じて極端な保護主義政策が、現実的な方向に修正されるようであれば、金融市場に安心感が広がると思われます。しかしながらそのような動きがみられるとしても、来年1月の大統領就任後になると考えます。

議会の牽制で現実的な方向に政策が修正されるなら、市場は次第に落ち着きを取り戻すとみる

トランプ候補の財政政策について、約10兆ドル規模の減税がそのまま実現する可能性は低いと思われますが、相応程度の減税や公共投資が行われるとみられます。その場合、低位の政策金利、ドル安、財政支出という組み合わせは、来年以降の米国経済を支えることが期待され、米国株にも好材料と考えられます。実際に政策効果が経済に表れると、米長期金利は緩やかに上昇し、ドルも上昇に転じると思われます。

以上より、金融市場は年末から年始にかけて不安定な動きが続くと予想され、日経平均株価もこの先、16,000円を割り込む時間帯も見られる可能性があります。しかしながら来年1月にトランプ候補が大統領に就任した後、「最初の100日」で議会の牽制機能が働き、より現実的な政策が打ち出されるようであれば、金融市場は次第に落ち着きを取り戻す展開が予想されます。

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 (2016年11月9日)

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