年末までのドル円相場展望

市川レポート(No.305)年末までのドル円相場展望

  • ドル円について短期的には一目均衡表が示唆する103円台の抵抗線を突破できるか否かに注目。
  • 日銀新政策は為替市場に物価上昇期待と円安を促すに至らず、米大統領選前の円高に注意。
  • 米大統領選挙が波乱なく終了し、12月に米利上げの流れとなれば、ドル円は年末105円を予想。

ドル円について短期的には一目均衡表が示唆する103円台の抵抗線を突破できるか否かに注目

ドル円は、9月に1ドル=100円水準でサポートされた後、緩やかにドル高・円安方向へ切り返し、10月に入ってもこの流れを継続しました。ドル高・円安方向への反転は9月27日を起点としているため、為替市場は9月26日の第1回米大統領選テレビ討論会を受けてクリントン候補優勢との見方をいったん織り込み、これがリスクオフ(回避)の後退につながったと推測されます。また足元の米長期金利上昇もドル高・円安要因と思われます。

テクニカル分析でよく使われる一目均衡表をみると、雲上限(過去52日間の最高値と最安値を足して2で割り26日先にずらした値)は、10月10日までは103円25銭水準、10月11日以降は103円51銭水準に位置しています(図表1)。ドル円は年初から雲上限に上値を抑えられて反落する場面が多くみられましたので、今回は103円25銭水準、あるいは103円51銭水準を超えてドル高・円安が進行するか否かに注目が集まります。

日銀新政策は為替市場に物価上昇期待と円安を促すに至らず、米大統領選前の円高に注意

なお日銀は9月21日、金融緩和強化のための新しい枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を発表しました。しかしながらドル円は発表を受けて一時的にドル高・円安で反応したものの、その後はすぐにドル安・円高方向の動きへ転じました。これをみる限り、為替市場は日銀の新しい枠組みでも物価の上昇は難しいと判断しているものと推測されます。

株式市場と同様、為替市場にとっても11月8日の米大統領選挙は年末までの重要イベントであり、トランプ候補優勢ならリスクオフの円買いに傾きやすく、クリントン候補優勢なら落ち着いた動きになりやすいと思われます。米大統領選挙までは不透明感の強い相場展開が見込まれ、ドル円が再び100円を割り込んでドル安・円高方向に振れるリスクは、まだ完全には払拭されていないと思われます。

米大統領選挙が波乱なく終了し、12月に米利上げの流れとなれば、ドル円は年末105円を予想

なお米国では政策を法案化するのは議会です。そのためトランプ候補が大統領になっても極端な政策が実現する可能性はかなり低いとみています。この点の織り込みが進めば、大統領選挙に起因するリスク回避の円高リスクは、徐々に後退していく可能性があります。また欧州の政治動向や中国の景気動向は、9月28日付レポート「年末までの日本株展望」でお伝えした通り、現時点で過度な警戒は不要と考えます。

米大統領選挙が波乱なく終了し、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが実施される流れとなれば、米国の政治・経済に対する市場の不透明感は大きく解消されます。その結果、年末に向けて投資家心理が改善し、ドル円はドル高・円安方向に反応しやすくなると思われます。ただし米金融当局は緩やかな利上げペースを示唆しているため、ドル円の上昇ペースも限定的となり、ドル円の年末水準は105円程度を見込みます。

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 (2016年10月5日)

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