9月FOMCの結果と市場の反応
市川レポート(No.301)9月FOMCの結果と市場の反応
- 予想通り利上げは見送られたが、声明にリスクバランス文言が復活し、利上げが近いことを示唆。
- 政策金利と経済の見通しはハト派的な内容に、ただイエレン議長は年内利上げの可能性に言及。
- FOMCの結果を受け、米国債利回りは低下、ドルは対主要通貨で下落、米国株は上昇で反応。
予想通り利上げは見送られたが、声明にリスクバランス文言が復活し、利上げが近いことを示唆
米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月20日、21日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り利上げ見送りを決定しました。ただ今回のFOMC声明で、2つの文言が注目されました。具体的には、①第2段落の「経済見通しへの短期的なリスクはおおよそ均衡(roughly balanced)」、②第3段落の「利上げの論拠は強まったが、当面は目標に向けて進展を続けているという更なる証拠を待つ」、という文言です。
①について、昨年12月の利上げ以降、リスクバランスの文言はFOMC声明から削除され、利上げの見送りが続きました。今回この文言が復活したことは、利上げが近いというメッセージと解釈できます。ただ時期については、②の文言によって、今しばらく待つという姿勢が示唆されており、これは今回の会合で利上げを見送った理由の説明にもなっています(図表1)。
政策金利と経済の見通しはハト派的な内容に、ただイエレン議長は年内利上げの可能性に言及
最新の経済見通しでは、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)は全般に下方修正されました(図表2)。2016年末の予想中央値は0.875%から0.625%へ低下し、年内2回から1回の利上げを示唆しています。同じく2017年末は1.625%から1.125%へ低下し、年内3回から2回の利上げを示唆しています。長期の水準も3.0%から2.875%へ引き下げられ、緩やかな利上げペースの見通しが改めて示されました。
また実質GDP成長率は、予想中央値が2.0%から1.8%へ低下しており、今回のFOMCメンバーによる見通しは、市場にハト派的な印象を与える結果になりました。なおイエレンFRB議長は記者会見において、足元の経済は過熱していると思われず、目標に向けて改善が続くのを見守る余裕はまだ少しあると述べた一方、労働市場の回復が続き、新たなリスクの芽が生じなければ、多くのメンバーと同様、年内1回の利上げが適切との見解を示しました。
FOMCの結果を受け、米国債利回りは低下、ドルは対主要通貨で下落、米国株は上昇で反応
FOMCの結果を受け、21日の米国市場では、米10年国債利回りが前日比4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、1.65%水準で取引を終えました。また米金利の低下を受けドルが対主要通貨で下落し、ドル円は一時1ドル=100円30銭水準までドル安・円高が進行しました。またダウ工業株30種平均は利上げ見送りを好感し、前日比163ドル74セント(0.9%)上昇の18,293ドル70セントで取引を終えています。そして翌22日も、米10年国債利回り低下、ドル安、ダウ工業株30種平均上昇という流れが続きました。
ドル円は再び100円割れが意識されますが、世界の金融市場が総じて落ち着いているため、極端な円高進行のリスクは比較的抑制されていると考えます。そのため6月24日の安値99円02銭水準を当面の下値目処とみています。なお日経平均株価にとって、利上げ先送りを好感した米株高は支援材料です。ただ節目の17,000円をしっかり回復できるかどうかは、ドル円相場がカギを握ると思われます。
(2016年9月23日)
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