7月FOMCの解釈とドル円相場

市川レポート(No.280)7月FOMCの解釈とドル円相場

  • FOMC声明第1段落の景気と物価の現状判断において、労働市場の判断は6月から上方修正。
  • 第2段落の「短期的なリスクは後退した」との表記は、それほど強いタカ派的なメッセージではない。
  • FOMCを受けた米金利上昇とドル高は限定的、明日の日銀会合で円安反応でも108円が目安。

FOMC声明第1段落の景気と物価の現状判断において、労働市場の判断は6月から上方修正

7月26日、27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り利上げが見送りとなりました。今回は、FOMCメンバーの経済および政策金利見通しもイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見もなく、声明のみの公表となりました。声明では、とりわけ英国民投票後の金融市場の混乱や、6月米雇用統計を受けた労働市場に関するFRBの見解に注目が集まりました。

声明の第1段落では、景気と物価の現状判断が示されます。今回、労働市場については「力強さを増した」という判断がなされ、前回6月の「改善ペースが減速した」という判断から上方修正されました。また雇用の伸びについても、前回の「鈍化した」から「5月は低調だったが6月は強かった」との表現に上方修正されました。そして経済活動自体は拡大しているとの見方が維持され、その他の項目にも大きな変更はありませんでした(図表1)。

第2段落の「短期的なリスクは後退した」との表記は、それほど強いタカ派的なメッセージではない

第2段落では、景気と物価の先行き判断が示されますが、こちらも基本的な判断は変わりませんでした。今回は、引き続き物価動向および世界経済と金融情勢に注視するとした一方、新たに「経済見通しへの短期的なリスクは後退した」との表記が加わりました。これが加わったことで、市場の一部には9月利上げの可能性を見る向きもあるように思われます。

ただ、今年1月の声明以降削除されている「経済活動と労働市場の見通しに対するリスクは均衡している」との文言は、依然として復活していません。そのため今回の新たな表記については、それほど強いタカ派的なメッセージではないと考えます。つまり、英国民投票後に金融市場は大きく混乱したものの、その後は落ち着きを取り戻しているため、経済見通しへの短期的なリスクは後退したという見方を示したに過ぎないと考えます。

FOMCを受けた米金利上昇とドル高は限定的、明日の日銀会合で円安反応でも108円が目安

米国の利上げ時期について、弊社では引き続き12月13日、14日のFOMCと予想します。日銀、イングランド銀行(BOE)、欧州中央銀行(ECB)による金融緩和が予想されるなかで、FRBが早急な利上げを行えば、為替市場でドルが上昇し、米製造業への影響や国内物価の下押し圧力拡大が懸念されます。また11月に米大統領選挙を控えていることからも、9月利上げの可能性は低いと思われます。

ドルは声明発表の直後、主要通貨に対し一時上昇しましたが、その後はほぼ全面安になっています。フェデラルファンド(FF)金利先物が織り込む年内の利上げ確率についても、前日から小幅低下しており(図表2)、米金利上昇を背景とするドル高の動きはしばらく限定的と考えます。ドル円にとって目先大きな材料は、明日の日銀金融政策決定会合です。ドル高・円安の動きは、買い入れ資産の対象拡大など新たな施策導入の場合に限られるとみていますが、それでも108円レベルが1つの目安と考えます。

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 (2016年7月28日)

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