英国民投票~直前・直後の心構え

2016/06/22

市川レポート(No.266)英国民投票~直前・直後の心構え

  • 足元のポンド高などは一時的なポジションの巻き戻しか、それとも英EU残留を織り込む動きか。
  • 残留織り込みの可能性は一部あるが、現時点で残留と決め込むことは拙速で、慎重姿勢が必要。
  • 残留なら市場の関心は改めて日米金融政策へ、離脱なら主要国は協調で市場の混乱抑制へ。

足元のポンド高などは一時的なポジションの巻き戻しか、それとも英EU残留を織り込む動きか

先週末に行われた英国の世論調査で、欧州連合(EU)残留派優勢という結果を機に、EU離脱に対する過度な警戒が幾分和らいだように思われます。ただ6月21日に発表された最新の世論調査では再び離脱・残留が拮抗するなど、依然として予断を許さない状況です。6月16日から6月21日までの間、為替市場では英ポンドが対主要通貨で大幅に上昇し(図表1)、ストックス欧州600指数も5.8%上昇しました(図表2)。

また同期間において日経平均株価は4.8%上昇し、ドル円は6月21日に一時1ドル=105円台をつけました。商品相場でも、これまでの金先物価格の上昇と原油先物価格の下落という動きが、そろって反転しています。このような相場の変化は、果たして一時的なリスクオフ(回避)ポジションの巻き戻しなのでしょうか、それとも早々に英国のEU残留を織り込む動きなのでしょうか。

残留織り込みの可能性は一部あるが、現時点で残留と決め込むことは拙速で、慎重姿勢が必要

過去を振り返ってみると、2014年9月18日、英国北部のスコットランドで独立を問う住民投票が行われました。この時、事前の世論調査で反対・賛成が拮抗し、大接戦が予想されていましたが、結果は独立反対が55%、賛成が45%と明確な差がついて独立否決となりました。最終的には多くの市民が独立による経済への影響を懸念し、現状維持に票を投じたと推測されます。

英国の国民投票が6月23日に迫るなか、今回もスコットランドの住民投票と同様に現状維持が選好されるとの見方から、足元の相場でEU残留の織り込みが一部進んでいる可能性は否定できません。ただ日米欧の中央銀行も強く警戒しているように、依然として英国のEU離脱リスクは残っています。少なくとも投票結果が明らかになるまでは相場を慎重にみて行く姿勢が必要で、現時点で残留と決め込むことは拙速と考えます。

残留なら市場の関心は改めて日米金融政策へ、離脱なら主要国は協調で市場の混乱抑制へ

6月22日に日経平均株価は16,095円81銭で寄り付き、ドル円は午前9時の時点で1ドル=104円72銭水準でした。投票結果は残留を予想していますが、実際にそうなった場合、上記の水準を基準とすれば、初期反応のひとつの目安として、日経平均株価は17,000円の手前、ドル円は107円への上昇がそれぞれ想定されます。なお国民投票後、市場の関心は改めて日米の金融政策に移り、政策判断が日本株と円相場の方向性に影響を与えると考えます。

離脱となった場合は、日経平均株価は15,000円割れ、ドル円も100円を割り込んで円高が進むと思われます。ただその際、主要国は流動性供給を含む協調的な政策を打ち出し、直ちに市場の混乱抑制に動くと予想します。なお投票結果は日本時間で6月24日の正午頃から次第に大勢が判明し始める見通しですが、そこに至る前でも思惑主導で日経平均株価やドル円レートが大きく上下する可能性があり、十分注意が必要です。

160622図表1160622図表2

 

 (2016年6月22日)

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