米雇用統計の下振れが円相場と日本株に与える影響
市川レポート(No.258)米雇用統計の下振れが円相場と日本株に与える影響
- 5月の米雇用統計の下振れを受け、金融市場では米利上げ時期の後退を織り込む動きが加速。
- FRBは追加的な経済データを精査する時間が必要とみられ、少なくとも6月利上げは見送られよう。
- 6月6日のイエレン講演で、利上げ時期への思惑から円相場と日本株が一段と動意付く可能性。
5月の米雇用統計の下振れを受け、金融市場では米利上げ時期の後退を織り込む動きが加速
6月3日に発表された5月米雇用統計において、非農業部門の雇用者数は前月比3万8千人増にとどまり、市場予想の同16万人増を大幅に下回る結果となりました。これを受け金融市場では米国の利上げ時期後退を織り込む動きが加速しました。フェデラルファンド(FF)金利先物市場から算出される6月の利上げ確率は、前日の約22%から約4%へ、7月は約55%から約27%へ、それぞれ急低下しました(図表1)。
米国債の利回りは、ほぼ全期間にわたって前日から低下し、為替市場では主要通貨に対してドル安が進行しました。ダウ工業株30種平均は前日比で一時140ドル超下落しましたが、ドル安は製造業の追い風になるとの見方から、下げ幅を31ドルまで縮小し取引を終えました。ドル円はドル安の流れを受け、1ドル=106円51銭水準まで円高が進行しました。
FRBは追加的な経済データを精査する時間が必要とみられ、少なくとも6月利上げは見送られよう
非農業部門雇用者数について、5月は米通信大手のストライキによる影響が指摘されています。ただ4月分が前月比16万人増から12万3千人増へ、3月分が同20万8千人増から18万6千人増へ、それぞれ下方修正されており、雇用の伸びにやや鈍化の兆しも窺えます。一方、5月の失業率は4月の5.0%から4.7%へ低下し、平均時給は前月に続き前年比で2.5%増えています。
もともと雇用統計は毎月の変動幅が大きいという特徴があるため、米国経済の先行きについては、今後発表されるその他の経済指標と併せて総合的に考えることが大切です。そのため米連邦準備制度理事会(FRB)は、今しばらく追加的な経済データを精査する時間が必要とみられ、少なくとも6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定される可能性は低下したと思われます。
6月6日のイエレン講演で、利上げ時期への思惑から円相場と日本株が一段と動意付く可能性
ドル円は5月30日に111円台をつけていましたので、5営業日で約5円の円高が進行したことになります。背景には、英国が欧州連合(EU)を離脱するとの懸念が再燃したことや、安倍首相の会見で経済対策や追加緩和が後ずれするとの見方が強まったことがありますが、今回の米雇用統計の下振れで円高が加速しました。現時点では5月3日につけた1ドル=105円55銭水準が再び視野に入りつつあります(図表2)。
日本株にとって、6月3日に米国株が下げ渋ったことは好ましい材料ですが、円高が重しとなる懸念があります。日経平均株価の方向性は目先、米利上げ時期を巡る思惑と円相場に左右されると思われ、下値についてまずは16,000円台の維持成否に注目が集まります。なお6月6日にFRBのイエレン議長の講演が予定されていますが、利上げ時期に関するコメントが出た場合、その内容次第で円相場と日本株が一段と動意付く可能性があるため注意が必要です。
(2016年6月6日)
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