FOMCと日銀会合が示唆するもの
市川レポート(No.242)FOMCと日銀会合が示唆するもの
- FOMC声明は総じてバランスのとれたものとなり、次回6月会合での利上げの可能性を残した。
- 日銀は金融政策決定会合で基本現状維持を決定、追加緩和期待の市場に失望感が広がる。
- FOMCと日銀会合を経て、円の上昇や日本株の下落が一気に加速していく可能性は低いとみる。
FOMC声明は総じてバランスのとれたものとなり、次回6月会合での利上げの可能性を残した
米連邦準備制度理事会(FRB)は4月26日、27日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、大方の予想通り政策金利の据え置きを決定しました。FOMC声明では、経済活動の現状判断が下方修正され、個別の項目では家計支出が下方修正されました。また前回「引き続きリスクをもたらしている」とされた「世界経済と金融情勢」は、物価動向とともに「注視する」という表現に置き換えられました(図表1)。
今回の声明は総じてバランスのとれたものとなり、次回6月14日、15日のFOMCにおける利上げの可能性は残っていると考えます。なおFOMC後のニューヨーク市場では、ダウ工業株30種平均が上昇、米10年国債利回りは低下、WTI原油先物価格は上昇、ドル円は1ドル=111円台で底堅く推移しました。金融市場に動揺を与えなかったという点でも今回のFOMCは評価できると思います。
日銀は金融政策決定会合で基本現状維持を決定、追加緩和期待の市場に失望感が広がる
日銀は4月27日、28日に開催した金融政策決定会合で基本現状維持を決定しました。また同時に公表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)では、物価目標の達成時期が「2017年度前半頃」から「2017年度中」へ先送りされました。また実質GDPおよび消費者物価指数(除く生鮮食品)の対前年度比伸び率について、2015年度から2017年度の見通しが全て下方修正されました(図表2)。
今回は市場で追加緩和期待が高まっていただけに発表直後に失望感が広がりました。前場は比較的堅調に推移していた日経平均株価は後場に急落し、前日比624円44銭安の16,666円05銭で取引を終えました。ドル円は1ドル=111円台から一気にドル安・円高が進行し、日本国債は失望感と緩和継続期待が交錯し、不安定な値動きとなりました。日本時間午後3時の時点で、ドル円は1ドル=108円76銭付近、日本10年国債利回りは-0.085%付近で推移しています。
FOMCと日銀会合を経て、円の上昇や日本株の下落が一気に加速していく可能性は低いとみる
FRBは政策判断にあたり、「物価」および「世界経済と金融情勢」を注視していますので、前者の上昇基調と後者の安定度合いが強まれば、次回6月利上げの公算は大きくなります。その時の市場環境はリスクオフが一段と進み、ドル全面安から円全面安への移行、株式をはじめとするリスク資産の上昇などが顕著になっていると想定されます。そのためFRBが利上げに踏み切ったとしても、市場への悪影響は限定されると考えます。
なお今回の日銀の政策決定を受け、市場の追加緩和期待は剥落した格好になっていますので、ゴールデンウィーク中は特に円相場の動向に注意が必要です。円が年初来高値を更新する展開となれば、日本株は連休明け後もしばらく低調な動きが続くと予想されます。ただ足元では、緩やかな米利上げペースが市場に浸透し、リスク資産全般に持ち直し傾向がみられることや、日銀の追加緩和観測自体は継続すると思われることから、相場の地合いが悪化し、円の上昇や日本株の下落が一気に加速していく可能性は低いと思われます。
(2016年4月28日)
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