円高反転のきっかけを探る

2016/04/11

市川レポート(No.235)円高反転のきっかけを探る

  • 原油がいったん落ち着きを取り戻すなか、ここ数日の円急騰は投機主導によるものとみられる。
  • 円買いの理由は①米当局のハト派姿勢、②原油反落のリスクオフ観測、③介入の可能性の低さ。
  • 円高反転のきっかけとして、4月14日、15日のG20や17日の主要産油国による会合に注目。

原油がいったん落ち着きを取り戻すなか、ここ数日の円急騰は投機主導によるものとみられる

ドル円は4月7日に一時1ドル=107円67銭水準までドル安・円高が進行しました。その後、8日の東京市場で麻生財務大臣の円高けん制発言を受け、円は対ドルで109円台に下落しましたが、同日の海外市場で再び円買いが優勢となり、結局108円07銭水準で取引を終えました。円はドル以外の主要通貨に対しても上昇していますが(図表1)、背景には4月に入ってからの原油反落をきっかけとするリスクオフの強まりがあります。

ただ原油は足元でいったん落ち着きを取り戻していることから、ここ数日の円急騰は投機主導によるものとみられます。実際、シカゴのインターナショナル・マネー・マーケット(IMM)に上場されている通貨先物について、4月8日に発表された4月5日時点の投機筋による円の売買動向をみると、円の買い越しは60,073枚(1枚=1,250万円)でした(図表2)。ここからも投機筋の積極的な円買い姿勢が確認されます。

円買いの理由は①米当局のハト派姿勢、②原油反落のリスクオフ観測、③介入の可能性の低さ

ドル円の下値目途は4月6日付けレポートの通り、106円台半ばレベルや節目の105円辺りとみていますが、早々に近づいてきました。為替レートは、株式や債券のようにキャッシュフローの裏付けがある資産とは異なり、単純に2通貨の交換比率です。そのため市場参加者の思惑が極端に偏った場合、通貨が短期間で急騰(急落)することはよくあります。

ただ思惑が極端に偏るにはそれなりの材料が必要です。今回であれば、①米金融当局のハト派姿勢、②原油反落によるリスクオフ観測、③円売り介入の可能性の低さ、などが考えられ、これらを理由に投機筋が円買いポジションを積み上げていると推測されます。そのため①~③に逆の動き、すなわち米早期利上げ観測の浮上、原油の急騰、介入の可能性の高まり、がみられれば、投機筋は円買いポジションを圧縮すると思われ、ドル安・円高反転のきっかけになると考えます。

円高反転のきっかけとして、4月14日、15日のG20や17日の主要産油国による会合に注目

しかし①~③は実際に逆の動きに転じる必要はなく、その見方を強める材料があれば十分です。まず①について、実際に米金融当局が早々にタカ派に転じる可能性は低いため、強めの米経済指標や米当局が注目する世界経済や金融情勢の安定が確認されれば、為替はドル高・円安で反応すると思われます。次に②について、4月17日の主要産油国会合における増産凍結の成否がポイントですが、会合前でも増産凍結が見通せるような関係者発言があれば、原油は上昇、ドル円はドル高・円安に振れるとみています。

最後に③について、現時点では実際に介入が行われる可能性は低いとみられますが、円相場の過度な変動を懸念する通貨当局者の発言で、いくらか円高進行を遅らせることはできると思われます。なお介入については諸外国(特に米国)の理解が極めて重要となります。そのため4月14日、15日にワシントンで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において、共同声明の為替に関する記述に何かしらの手掛かりがみられれば、円は大きく押し下げられる展開も予想されます。

160411図表1160411図表2

 

 (2016年4月11日)

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