日銀短観直前チェックと日本株の見方

市川レポート(No.229)日銀短観直前チェックと日本株の見方

  • 年初の市場混乱などを勘案すれば、企業景況感は製造業を中心に前回より悪化が予想される。
  • 2016年度の想定為替レートにも注目、そこから一段の円高は輸出企業などの業績下振れ要因。
  • 物価見通し下振れで追加緩和観測浮上なら、3月短観後も日本株は底堅い動きとなる可能性。

年初の市場混乱などを勘案すれば、企業景況感は製造業を中心に前回より悪化が予想される

日銀は4月1日に3月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表します。通常、3月短観の回答期間は2月25日前後から3月までですが、今回この期間において原油価格や新興国通貨は落ち着きを取り戻しました。ただドル円が一時110円台をつけるなど円高への懸念は残りました。また、そもそも年初から市場が大きく混乱したことを勘案すれば、企業の景況感は製造業を中心に前回12月調査より総じて悪化すると思われます。

企業の景況感は、良いと回答した企業の割合(%)から悪いと回答した企業の割合(%)を引いて算出する業況判断DIで示されます。業績判断DIには「最近」と「先行き」(3カ月先)がありますが、両者の比較や、前回調査との比較によって、景況感の改善または悪化の広がりを把握することができます。また業績判断DIは、企業の規模毎(大企業・中堅企業・中小企業)、製造業・非製造業の業種毎に確認できます。

2016年度の想定為替レートにも注目、そこから一段の円高は輸出企業などの業績下振れ要因

市場予想によれば、大企業製造業の「最近」の業況判断DI(図表1)は、前回のプラス12から、今回はプラス8へ悪化が見込まれています。ただ前回の「見通し」はプラス7でしたので、市場予想通りなら、足元の景況感は3カ月前の「見通し」より悪くなかったことになります。しかしながら市場の予想では、今回の「見通し」はプラス7と、先行き小幅の悪化が示されています。

この他、2016年度の想定為替レート(図表2)や2016年度の設備投資計画(土地投資を含みソフトウェア投資を除く)も注目したいと思います。想定為替レートは事業計画の前提となるドル円レートですが、4月以降その水準よりドル安・円高が進行すれば、輸出企業などの業績下振れ要因となります。また設備投資は、計画が固まっていない企業も多く、3月調査では低めの数字がでる傾向にあります。市場予想では大企業全産業で前年度比0.7%減となっていますが、企業の慎重姿勢をみる上では参考になると思われます。

物価見通し下振れで追加緩和観測浮上なら、3月短観後も日本株は底堅い動きとなる可能性

以上より、3月短観の結果を受けて、投資家は企業業績や日本株に対し改めて慎重な見方を維持することも予想されます。なお翌営業日の4月4日、調査の一環として「企業の物価見通し」の概要が公表されます。ここでは1年後、3年後、5年後の販売価格と物価全般の見通しが示されます。前回調査から明確に下振れた場合、日銀の追加緩和期待が高まり、3月短観後も日本株は意外に底堅い動きとなる可能性があります。

弊社ではコアリサーチユニバース216社の経常利益について、2016年度は前年度比+5.6%を予想しています。この予想に関する為替レートの前提は1ドル=115円、1ユーロ=130円です。仮に為替レートを1ドル=110円、1ユーロ=120円へそれぞれ円高方向に修正すると、計算上2016年度の経常利益は前年度比+2.0%台へ鈍化します。2016年度の想定為替レートも踏まえ、日本株をみる上で引き続き円相場の動向には注意が必要です。

160330 図表1160330 図表2

 

 (2016年3月30日)

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