イエレン議長の議会証言とその後の金融市場

市川レポート(No.211)イエレン議長の議会証言とその後の金融市場

  • 議会証言後も世界的なリスクオフの動きが止まらず、為替市場ではドル円が一時110円台へ。
  • イエレン議長は、海外動向は米経済成長にリスクだが、早急な利下げは不要との見解を示す。
  • 米利上げ観測後退がドル安・円高の一因に、G20を待たずに政府・日銀が動くかに注目が集まる。

議会証言後も世界的なリスクオフの動きが止まらず、為替市場ではドル円が一時110円台へ

米連邦準備制度理事会(FRB)は2月と7月の年2回、議会に金融政策報告書を提出し、FRB議長が上下両院で金融政策について証言を行っています。イエレン議長は2月10日、下院の金融サービス委員会で証言に臨みましたが、年初から国際金融市場の動揺が続くなか、金融政策についてどのような見解が示されるのか、市場関係者の注目が集まっていました。

議会証言の内容は総じてハト派的との見方が多かったため、米国債利回りは低下し、為替市場ではドルが主要通貨に対し下落しました。また米経済成長の下振れリスクが指摘されたことなどを嫌気し、米国株はさえない動きが目立ちました。議会証言後もリスクオフ(回避)の動きは止まらず、翌11日には世界の主要市場で株安と債券高が進行し、ドル円もドル安・円高が加速し、一時110円台をつけました。

イエレン議長は、海外経済の動向は米経済成長にリスクだが早急な利下げは不要との見解を示す

イエレン議長は証言のなかで、足元の金融市場の混乱についてそのリスクを冷静に分析し、米国経済については慎重ながらも楽観的な見方を示しました。また利上げについては経済見通しのデータ次第とし、予測よりも強い成長や物価上昇となれば利上げペースは速まり、そうでなければペースは緩やかになるという従来の見解を維持しました。基本的には1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された声明の内容を踏まえたものでした。

なおイエレン議長は、海外経済の動向が米経済の成長にリスクをもたらしているとし、人民元や資源価格の下落についても触れ、下振れリスクが実現した場合は、金融市場がさらに引き締まる可能性があると述べました。しかしながらその一方で、FOMCがすぐに利下げの必要な状況に直面するとは想定していないと明言し、次の政策判断は金利の引き上げという考え方を示しました。

米利上げ観測後退がドル安・円高の一因に、G20を待たずに政府・日銀が動くかに注目が集まる

イエレン議長は3月の利上げの可能性を排除しませんでしたが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む3月の利上げ確率は2月11日時点ですでにゼロ%となり、また12月の利上げ確率も11.2%に低下しています(図表1)。それに伴い米国債のイールドカーブ(利回り曲線)は大幅に下方シフトし、その結果、日銀がマイナス金利導入を決定したにも関わらず日米金利差は縮小し、ドル安・円高を進行させる一因となりました(図表2)。

イエレン議長の議会証言後、次の重要イベントは2月26日、27日に上海で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議です。ここで市場安定のために何らかの協調方針が示されれば、相場のセンチメントが大きく改善するきっかけになると思われます。ただすでに円が急騰しており、日本株や国内経済への影響が懸念されます。そのためG20を待たずに政府・日銀が為替介入も含めた具体的な動きをみせるかに注目が集まります。

160212 図表1 160212 図表2

 (2016年2月12日)

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