1月FOMC声明と相場へのインプリケーション
市川レポート(No.203)1月FOMC声明と相場へのインプリケーション
- FOMC声明は総じてハト派的な内容だったが、次回3月会合での利上げの可能性を残す格好に。
- 政策判断にあたって、世界経済と金融情勢が労働市場などに与える影響を重視することを明示。
- バランスのとれた声明は相場に強い方向性を示す材料とはならず、次の手掛かりは2月10日か。
FOMC声明は総じてハト派的な内容だったが、次回3月会合での利上げの可能性を残す格好に
米連邦準備制度理事会(FRB)は1月26日、27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を市場の予想通り0.25%~0.50%で据え置くことを決定しました。注目のFOMC声明は総じてハト派的な内容でしたが、次回3月会合での利上げの可能性を残す格好となりました。以下、声明のポイントを整理しながら今後の金融政策を展望し、相場への影響を考えます。
第1段落では「経済成長は昨年末にかけて減速した」とし、景気の現状判断を下方修正しました。個別の需要項目では、個人消費や設備投資の判断が下方修正された一方、労働市場については一層の改善が示されました。また物価の現状判断については、市場に基づくインフレ調整指標が「一段と低下」に下方修正されました。ただし景気と物価とも先行きは上向くと判断し、従来の見方を基本的に維持しました(図表1)。
政策判断にあったって、世界経済と金融情勢が労働市場などに与える影響を重視することを明示
今回最大の焦点は、動揺が続く金融市場への言及でした。これについては第2段落で「世界経済と金融情勢を注意深く監視し、労働市場、物価、見通しのリスクバランスへの影響を評価する」との文言が新たに加わりました。これによって前回声明の「経済活動と労働市場の見通しに対するリスクはバランスしている」という部分が削除され、FRBはリスクバランスの判断を今回は見送ったということになります。
なお世界経済と金融情勢について、9月のFOMC声明では「経済活動をやや抑制し、短期的には物価に更なる下方圧力をかける可能性が高い」と指摘していましたが、今回はそこまで踏み込んだ表現とはなっておらず、「影響を評価する」にとどめています。そのため、評価をした結果、世界経済と金融情勢が労働市場などに与える影響は限定的ということになれば追加利上げの可能性は高まり、逆に影響が大きいということになればその可能性は低下することになります。
バランスのとれた声明は相場に強い方向性を示す材料とはならず、次の手掛かりは2月10日か
第4段落の金融政策の運営方針にも変更はありませんでした。今回の声明は、景気や物価の現状を慎重に判断し、足元の金融市場の動向も注視するとした上で、政策運営の基本スタンスは維持するなど、バランスのとれたものとなっています。ただそれゆえ相場には強い方向性を示す材料とはなりませんでした。声明発表後、米国株は下落、為替はドル安・円高で反応しました。景気と物価の現状判断が下方修正されたことで、ややリスク回避の動きが強まったものと推測されます。
またFF金利先物市場が織り込む年内の利上げ回数も、せいぜい1回というところまで低下しています(図表2)。金融市場の動揺が続けば利上げ見通しは更に弱まることになりますが、緩和的な環境が続くことで最終的に株価などリスク資産の価格を下支えることも予想されます。金融市場が落ち着けば利上げ期待が高まりますが、その場合でもFRBは慎重に政策判断を行うとみられ、例えば年2回程度の利上げペースであれば市場への影響は限定されると思われます。なおイエレン議長は2月10日に米下院で議会証言を行う予定ですが、ここで政策に関する新たな手掛かりを探ることになります。
(2016年1月28日)
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