FRB高官発言と相場の反応

2015/11/06

市川レポート(No.170)FRB高官発言と相場の反応

  • イエレン議長らの発言からFRBは12月利上げの選択肢を保持している様子がうかがえる。
  • 年内の利上げ観測が高まり、米国株と米国債が下落、為替は米ドルがほぼ全面高に。
  • 市場の耐性は強化されつつあり、利上げでもFRBの市場との対話によって混乱は回避へ。

イエレン議長らの発言からFRBは12月利上げの選択肢を保持している様子がうかがえる

 11月4日、市場で連邦準備制度理事会(FOMC)の中心メンバー3名の発言に注目が集まりました。米下院金融サービス委員会で証言を行ったのは米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長(日本時間11月5日午前0時より)、ニューヨークで記者会見を行ったのはニューヨーク連銀のダドリー総裁(同午前4時半より)、そしてワシントンのナショナル・エコノミスト・クラブで講演を行ったのはフィッシャー副議長(同午前9時半より)でした。

 イエレン議長は経済データ次第という前提を置きながらも、12月に利上げを行う可能性はあると述べました。またダドリー総裁も同じく12月の利上げの可能性に言及し、その後に経済データを見極めると付け加えました。一方フィッシャー副議長は12月利上げの可能性について直接触れませんでしたが、米国のインフレ率は考えられているほど低くなく、エネルギー価格の下落が止まれば上昇し始めるとの見解を示しました。つまりいずれの発言からもFRBが12月利上げの選択肢を保持している様子がうかがえます。  

年内の利上げ観測が高まり、米国株と米国債が下落、為替は米ドルがほぼ全面高に

 FRB高官3名の発言を受けた11月4日から5日にかけての相場の動きを確認してみます。イエレン議長の発言を機に年内の利上げ観測が高まり、フェデラルファンド(FF)金利先物市場から計算される12月の利上げ確率は3日の50%から4日は56%、5日は58%に上昇しました(図表1)。こうしたなかダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数はそろって2日続落し、米10年国債利回りも2日続落(利回りは上昇)となり、利上げ警戒の動きが顕著となりました。 

 一方、為替市場では米ドルが主要通貨に対しほぼ全面高となりました。ドル円は11月5日に一時122円ちょうど付近まで上昇し、上値抵抗線として意識されている90日移動平均線(5日は121円60銭付近に位置)を上抜けました。なお新興国通貨や資源国通貨は、米ドルが上昇するなかで相対して売られる形となりましたが、さほど大幅な下落には至りませんでした(図表2)。主要アジア通貨の対米ドル下落率をみると、0.5%未満にとどまっています。 

市場の耐性は強化されつつあり、利上げでもFRBの市場との対話によって混乱は回避へ

 このように米国株や米国債の下落は比較的小幅にとどまっており、新興国通貨や資源国通貨にも動揺はみられません。また11月5日の日経平均株価も前日比189円50銭高となり、ドル高・円安進行のプラス要因が、米株安のマイナス要因を上回る状況にあります。以上を踏まえると、米利上げという大きなショックに対する金融市場の耐性は、夏場の混乱を経たこともあり、強化されつつあるように思われます。 

 ただ12月の利上げは無条件ではなく、経済データ次第であるため、11月6日に発表される10月雇用統計には注意しておく必要があります。それでも労働市場の急速な悪化や、原油価格の底割れという事態に陥らない限り、12月利上げの可能性は高まりつつあるように思われます。また実際に利上げが行われた場合でも、FRBが十分に市場との対話を行うことで、金融市場の大きな混乱は回避できるとみています。

151107 図表1151107 図表2

 (2015年11月6日)

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