豪ドル相場の見通し
市川レポート(No.169)豪ドル相場の見通し
- RBA理事会は政策金利の据え置きを決定したが、声明はややハト派的な内容に。
- 金利先安観がしばらく豪ドル相場の重しに、対米ドルでは90日線の上抜け成否に注目。
- 対円でも目先は90日線での攻防が予想され、200日線の回復には時間を要しよう。
RBA理事会は政策金利の据え置きを決定したが、声明はややハト派的な内容に
オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は11月3日の理事会で、政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを2.0%に据え置くことを決定しました。今回の声明では「ここ最近、経済環境が改善するとの見通しがいくらか強まった」ことが据え置きの理由として示唆されました。ただその一方で、経済に余剰能力が残る公算が大きいとの見方は維持し、「インフレ見通しには一段の政策緩和の余地がある」との文言を新たに追記するなど、総じてみればややハト派的な内容と解釈されます。
なお10月28日に発表された7-9月期の消費者物価指数(CPI)は、前年同期比+1.5%で前期の伸びと変わりませんでしたが、RBAが重視する基調CPI(CPIのトリム平均値と加重中央値の平均)は前年同期比+2.2%と前期の同+2.3%から鈍化しました。RBAはCPIの前年比伸び率を中期平均で2.0%~3.0%にすることを目標としていますので、今回の7-9月期CPIとRBA理事会を経て、追加緩和の可能性は以前より高まりつつあるように思われます。
金利先安観がしばらく豪ドル相場の重しに、対米ドルでは90日線の上抜け成否に注目
豪ドルの対米ドル為替レートは、年初1月15日に1豪ドル=0.8295米ドル水準の高値をつけてから、夏場まで軟調な地合いが続きました。豪ドル安の背景には、中国の景気減速と米国の利上げ観測があります。中国は豪州にとって最大の輸出相手国であり、主要輸出品目である鉄鉱石や石炭の一大消費国でもあります。そのため中国景気の減速が貿易取引を通じて豪州経済に悪影響を及ぼすという思惑が形成されやすく、これに米国の利上げ観測を主因とする米ドル高が重なって、豪ドルに売り圧力が強まったと推測されます。
豪ドルは9月7日に1豪ドル=0.6896米ドル水準の安値をつけた後、徐々に下値を切り上げています(図表1)。米中の悪材料を消化しつつあるように思われ、目先は90日移動平均線の上抜けの成否に注目が集まります。ただ市場では来年2月のRBA理事会での利下げ確率を65%程度とみていますので、金利先安観はしばらく豪ドル相場の重しとなる恐れがあります。そのため200日移動平均線までの回復には相応に時間を要するとみられます。
対円でも目先は90日線での攻防が予想され、200日線の回復には時間を要しよう
豪ドルの対円為替レートは、7月9日と28日に1豪ドル=89円台前半でダブルボトムを形成し、8月に入ると92円台を回復しました。しかしながら8月11日の人民元切り下げをきっかけに金融市場が大きく混乱すると、次第にリスク回避の円買いが優勢となり、豪ドル円は8月24日に1豪ドル=82円11銭水準の安値をつけ、その後9月7日には81円93銭水準まで続落しました。
足元の豪ドル円は反発の動きに転じており、11月は1豪ドル=85円~87円台での推移が続いています(図表2)。ドル円相場が安定推移するなかで、豪ドル円が一気に90円台を回復するにはやや材料不足と思われます。目先は対米ドルと同様、90日移動平均線の上抜けを試す展開が予想され、88円水準の攻防が見込まれます。200日移動平均線は直近で91円台前半に位置しており、同水準への回復も今しばらく時間をみておく必要があると考えます。
(2015年11月4日)
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