日銀政策委員の顔ぶれと金融政策の見通し(その1)
市川レポート(No.154)日銀政策委員の顔ぶれと金融政策の見通し(その1)
- 最高意思決定機関の政策委員会は、総裁1名、副総裁2名、審議委員6名で構成される。
- 金融緩和スタンスについては、積極派が3名、慎重派が3名、中立派が3名とみられる。
- 個人消費やドル円の水準などを勘案すれば、10月30日に追加緩和を急ぐ理由は少ない。
最高意思決定機関の政策委員会は、総裁1名、副総裁2名、審議委員6名で構成される
過去のレポートでは米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーについて金融政策スタンスや政策金利予想に関する分析を行ってきましたが、今回は日銀の政策委員会に焦点をあて、政策委員のスタンスなどについて解説します。市場では日銀の追加緩和期待が強まっているため、改めて委員会の制度や政策スタンスを整理しておくことは、今後の金融政策を見通す上で有益と考えます。
政策委員会は日本銀行の最高意思決定機関であり、総裁1名、副総裁2名、審議委員6名の合計9名で構成されます。政策委員会は金融政策の決定に加え、金融政策以外の業務(経営戦略上の重要事項)の決定も行います。なお審議委員について日銀法では「経済又は金融に関して高い識見を有する者、その他の学識経験のある者」と定められており、実際に学者、民間企業・金融機関の役員、民間エコノミストなど多様な構成となっています(図表1)。
金融緩和スタンスについては、積極派が3名、慎重派が3名、中立派が3名とみられる
9名の政策委員について金融緩和に関するスタンスをまとめると図表2の通りになります。2014年10月に追加緩和を提案した日銀執行部である黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁は積極派に分類されます。これに対し、追加緩和に反対票を投じた石田委員、佐藤委員、木内委員は慎重派に分類されます。なお木内委員は現在、緩和規模の縮小を主張しており、9名の政策委員の中では最も慎重派と考えられます。
白井委員は当時、追加緩和に賛成票を投じましたが、物価目標の達成時期は「2016年度前半頃」から遅れるとの見方を示しています。また2015年3月に就任した原田審議役は、黒田総裁の支持を表明していますが、物価目標の達成時期については柔軟な姿勢をみせています。そして2015年7月に就任した布野委員は、緩和に前向きな発言と慎重な発言でバランスをとっています。そのためこの3名は中立派に分類されます。
個人消費やドル円の水準などを勘案すれば、10月30日に追加緩和を急ぐ理由は少ない
物価の基調はしっかりと改善してきているという黒田総裁の主張に足元で変化はなく、10月6日、7日に開催された金融政策決定会合でも政策運営の現状維持が決定されました。ただ一部報道によれば、日銀は10月30日公表の展望レポートで物価見通しを下方修正し、物価目標達成時期の先送りを検討している模様であり、市場でも同日に追加緩和が決定されるとの見方は少なくありません。
なお日銀は2015年4月の展望レポートで物価見通しを下方修正し、物価目標の達成時期も先送りしましたが、追加緩和は見送ったという前例があります。確かにここ数カ月の金融市場の混乱を考えれば、日銀の追加緩和の可能性は春先よりも高まったと判断されます。しかしながらここにきて国内の個人消費に明るい兆しが見え始めていることや、足元でドル円の為替レートが1ドル=120円前後で推移していること、また前述の政策委員の緩和スタンスなどを勘案すれば、10月30日に物価見通しの下方修正などがあっても、追加緩和を急ぐ理由は少ないように思われます。そこで次回のレポートでは、日銀の次なる一手とその時期について考えてみます。
(2015年10月8日)
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