世界的な株価反発と米中の不確実性
市川レポート(No.137) 世界的な株価反発と米中の不確実性
- 世界的な株価の反発は中国利下げよりも米利上げの不確実性後退によるところが大きい。
- 中国経済は慎重にみるべきだが、緩和的な金融・財政政策で景気腰折れは回避されよう。
- 米中の不確実性は依然残るも、相場反転を見据えた投資マネーの動きに違和感はない。
世界的な株価の反発は中国利下げよりも米利上げの不確実性後退によるところが大きい
8月25日に中国人民銀行(中央銀行)は追加緩和を決定しましたが、直後の各国株価の動きにはバラつきがみられました(図表1)。日本時間午後7時過ぎに追加緩和のニュースが伝わると、欧州株は買い安心感から反発して取引を終えました。これに対し米国株は上昇して始まったものの終盤に失速し、結局この日は続落となりました。翌26日には日本株と一部のアジア株は上昇したものの、中国株と欧州株は下落し、この時点では中国の追加緩和に対する評価はまちまちだったように思われます。
そして26日の米国株が急反発したことを好感し、翌27日には日本株、中国株、アジア株が全面高となりました。欧米市場もこの流れを受け継ぐと、これまでの流れが一転し、この日は世界同時株高の様相を呈することになりました。これは中国の追加緩和が改めて評価されたというよりも、26日の米株高の要因となった米利上げ先送り観測など、米国の不確実性がいったん後退したことによるところが大きいと思われます。
中国経済は慎重にみるべきだが、緩和的な金融・財政政策で景気腰折れは回避されよう
依然として中国経済に対する市場の懸念は払拭されていないため、引き続き中国要因には警戒が必要です。7月の中国経済指標を見る限り、5月と6月の回復傾向は維持できておらず、足元の成長ペースはやや鈍化していると考えられます。中国では緩和的な金融・財政政策が実施されていますが、実体経済への効果を見極めるには、年後半の経済指標を見極める必要があります。
中国政府は公共投資に力を入れており、この先もインフラ整備や環境対策など、成長力の向上につながる政策発動を積極的に行う見通しです。また中国人民銀行も預金準備率の引き下げを中心に一段の追加緩和に踏み切る可能性があると思われます。そのため中国経済については、年末に向けて内需が緩やかに持ち直すことが期待され、景気の腰折れは回避されるとみています。
米中の不確実性は依然残るも、相場反転を見据えた投資マネーの動きに違和感はない
このところ市場の関心は中国情勢に集中していましたが、世界経済のけん引役である米国の動向も把握しておく必要があります。米国の景気回復の足取りは総じてしっかりしており、金融当局は金融正常化に向けた歩みを進めると思われます。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月16日、17日に開催されますが、リスクオフ(回避)の動きが収束しないうちに利上げに踏み切る可能性は低いとみています(図表2)。
ただ年内の米利上げは十分想定され、また中国についても今後の経済指標をにらみつつ、成長ペースの回復度合いを確認していく必要があります。つまり米国と中国の不確実性は依然として残っており、この先も相場の波乱要因となり得ます。しかしながら今回の大幅調整を経て、これらの不確実性もある程度消化されているため、極端なリスクオフの反応は少なくなるとみています。なお現時点で割安な水準まで売り込まれた優良株や主力株については、買いの好機という見方もできると思われます。相場の反転を見据えた投資マネーの動きが活発化しても違和感はありません。
(2015年8月28日)
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