リスクオフ相場の持続性
市川レポート(No.135) リスクオフ相場の持続性
- 週明けもリスクオフの動きが加速し、株式市場では世界同時株安の様相が一段と強まる。
- しかしながら足元のリスクオフ相場も、従来通りの発生と収束の過程を辿ると思われる。
- 目先不安定な動きは続こうが、セリング・クライマックス後を見据える冷静さも必要。
週明けもリスクオフの動きが加速し、株式市場では世界同時株安の様相が一段と強まる
金融市場では週明けもリスクオフの動きが加速しており、投資マネーの安全資産への流入が続いています。これは中国の景気減速懸念や米利上げ観測など、不確実性の高まりが投資家心理を悪化させたことが影響していると思われます。株式市場では世界同時株安の様相が一段と強まっており、8月14日から24日までの終値ベースで日経平均株価の下げ幅は1,978円77銭、ダウ工業株30種平均は1,606ドル05セントに達しました。
原油など天然資源の一大消費国である中国の景気減速懸念は、関連市場にも大きな影響を与えています。原油需要が減少するとの見方から、WTI原油先物価格は8月24日に一時1バレル=37ドル75セントの安値を付け、資源国や貿易で中国との結びつきが強いアジア諸国で株式や通貨の下落が続いています(図表1)。一方、投資マネーの逃避先としては、円、ユーロ、金、国債などが選好されています(図表2)。
しかしながら足元のリスクオフ相場も、従来通りの発生と収束の過程を辿ると思われる
投資家が不確実性の高まりに対してリスク・ポジションを圧縮することは合理的な行動です。特に今年は、米国での利上げ開始が見込まれていたため、株価などが利上げ前の警戒感から一時的に不安定な動きになることは、ある程度想定され得る事態ともいえます。米利上げだけでも相場を神経質にさせるには十分な材料ですが、それに中国での株価急落や通貨切り下げという新たな材料が加わったことにより、先行き不透明感が一気に増してしまいました。
一般に、資産価格への影響が見極めにくい材料が出た時ほど、検証よりも資産売却が先行されやすくなります。そのため相場は往々にして行き過ぎた水準まで売られること(オーバーシュート)があります。そして時間の経過とともに材料の分析が進み、極端に深刻な影響はないとの安堵が広がれば、次第に買い戻しが優勢となり、相場は落ち着きを取り戻します(オーバーシュートの修正)。足元のリスクオフ相場も、このような従来通りの発生と収束の過程を辿ると思われます。
目先不安定な動きは続こうが、セリング・クライマックス後を見据える冷静さも必要
ただ金融市場全般に、今しばらく不安定な動きが続き、落ち着きどころを探る展開が予想されます。不確実性の解消はリスクオフの収束につながりますので、とりわけ中国や米国の金融当局の動きが注目されます。中国では金融緩和を含む一段の景気対策、米国では利上げに関する当局と市場との対話の強化などが投資家心理の改善につながる可能性があると思われます。
世界の金融市場は依然として過剰流動性に溢れており、悪材料の影響を相当程度緩和できる状態にあります。米国は利上げ開始後も国債などの再投資を継続する見通しで、過剰流動性が急速に縮小することはありません。日銀や欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を継続していることから、世界全体でみれば過剰流動性は今も拡大し続けています。そのため中国や米国の不確実性に起因する動揺も、現在の流動性相場で十分吸収可能と思われます。それでも大量の売りが出回り続ければ、それはそれで需給の改善につながり、セリング・クライマックス(売りの最終局面)に近づくことになります。悲観一色のなかでも、その先の相場の反転上昇を見据える冷静さも必要と考えます。
(2015年8月25日)
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