ここからの日本株をどうみるか

市川レポート(No.109) ここからの日本株をどうみるか

  • 足元の日本株の下落は健全な調整の範囲内で、中長期的な上昇基調は損なわれず。
  • 中国株下落やギリシャ問題深刻化で世界的な金融危機が起こる可能性は極めて低い。
  • 日本株は米利上げ前の夏場に不安定な時間帯を迎え、その後年末にかけ上昇を予想。

 

足元の日本株の下落は健全な調整の範囲内で、中長期的な上昇基調は損なわれず

 日本株は、中国株の動向やギリシャ問題の進展を睨み、しばらく不安定な値動きが続くと思われますが、中長期的な上昇基調が損なわれることはないと考えます。そのため日本株については振れ幅を伴いつつも上昇基調を維持するという従来の見方に変わりはありません。一般に、株式のようなリスク資産は価格の変動率(ボラティリティ)が大きく、一本調子で上昇することは多くありません。その意味で足元の日本株の下落は健全な調整の範囲内とみてよいと思います。むしろ不安材料に対しても強気一辺倒で上昇する相場にこそ警戒が必要です。 

中国株下落やギリシャ問題深刻化で世界的な金融危機が起こる可能性は極めて低い

 中国株の下落について市場では、中国の個人金融資産に占める株式の割合は10~20%程度で、銀行の信用取引融資や株式抵当融資は証拠金や担保掛目が設定されていることから、個人消費の低迷や金融システムの動揺はある程度抑制されるとの見方もあります。それでもこの先、中国の消費関連指標の変化や銀行間の資金取引動向には注意すべきと思います。ただ株価が一段安となれば政府が株価維持政策(PKO)を強化し、実体経済への懸念が強まれば中国人民銀行が追加緩和を実施するとみられ、最終的に中国株の下落が世界の経済や金融市場を混乱させる可能性は極めて低いと予想します。

 ギリシャ向け金融支援の協議は7月12日に期限を迎えます。欧州連合(EU)とギリシャが財政緊縮案で合意に至れば第3次金融支援が実行されます。合意に至らなければギリシャは資金不足に陥り、7月20日のギリシャ国債の債務不履行(デフォルト)、緊急流動性支援(ELA)の打ち切り、ギリシャ政府による並行通貨の発行、政局の流動化という展開が予想されます。後者の場合、並行通貨の発行がユーロ離脱とみなされる可能性がありますが、根本的な解決策とはならず、結局はEUに支援を求めざるを得ないと思われます。この場合、市場の混乱が見込まれますが、ギリシャの債務は公的部門が7割強を保有することや、ユーロ圏内で危機波及を抑制する安全網が整備されていることなどから、世界的な金融危機や信用収縮が発生する恐れは極めて小さいと考えます。

日本株は米利上げ前の夏場に不安定な時間帯を迎え、その後年末にかけ上昇を予想

 中国株が下げ止まらず、ギリシャ向け金融支援が打ち切りとなれば、日経平均株価が再び19,000円割れを試す動きも予想されます。しかしながら現在は世界の金融市場に過剰流動性が溢れています(図表1、2)。そのため実体経済が中国株の下落やギリシャ問題から受ける衝撃は、過剰流動性が緩衝材となって相当程度吸収されると考えます。より警戒すべきは流動性を縮小する方向に作用する材料、すなわち米国の利上げです。中国株の動きやギリシャ問題が大きな混乱につながらない限り、早ければ9月にも行われるとみていますが、今回は金融政策の正常化という過去に例のない政策決定となります。そのため米国株のみならず日本株も夏場にかけて警戒感が強まり、不安定な値動きが続く可能性があります。

 しかしながら米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ後も米国債の再投資を継続する見通しであることから、過剰流動性が急速に縮小することはないと思われます。そのため利上げ開始後は、緩やかな引き締めペースと過剰流動性の維持が確認されることで安心感が広がり、日米の株式相場は年末にかけて上昇基調に戻るとみています。その際、日経平均株価については22,000円を視野に入れる展開が予想されます。

150710 図表1150710 図表2 

 (2015年7月10日)

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