本邦通貨当局の発言から読み解く為替介入の可能性
本邦通貨当局の発言から読み解く為替介入の可能性
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- ドル円は3月27日、33年8カ月ぶりのドル高・円安水準に達し、市場で為替介入の思惑が強まる。
- 過去の事例から、要人発言の警戒色の強まりや、日銀のレートチェックは為替介入が近いシグナル。
- 財務省はすでに介入を意識する段階か、当局と投機の神経戦が続くなか、レートチェックに要注意。
ドル円は3月27日、33年8カ月ぶりのドル高・円安水準に達し、市場で為替介入の思惑が強まる
ドル円は3月27日の午前11時半過ぎ(日本時間、以下同じ)、一時1ドル=151円97銭をつけ、1990年7月以来、33年8カ月ぶりのドル高・円安水準に達しました。背景には、日銀の田村直樹審議委員の発言があると思われ、日銀内でもタカ派とされる田村氏が、同日午前10時からの講演で、想定よりも慎重な姿勢を示したことから、日銀の早期追加利上げに対する市場の警戒が和らぎ、ドル買い・円売りが膨らんだと推測されます。
その後、財務省と金融庁、日銀は同日午後6時15分から国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開催し、円相場の過度な変動は望ましくないとの考え方を確認しました。なお、3者会合が開催されるとの報道が伝わると、市場ではドル売り・円買いの為替介入への思惑が強まり、ドル円は一気に反転し、同日午後8時半過ぎには151円近くまでドル安・円高が進みました。
過去の事例から、要人発言の警戒色の強まりや、日銀のレートチェックは為替介入が近いシグナル
日本では、為替介入は財務大臣の権限において実施され、日銀は特別会計に関する法律および日本銀行法に基づき、財務大臣の代理人として、その指示により為替介入の実務を遂行します。財務省は足元の円相場を注視している模様で、市場でも為替介入への警戒感が高まっています。前回の為替介入は、2022年の9月と10月に実施されましたが、当時の財務省関係者の発言などを振り返り、今回の為替介入の可能性を探ります。
前回は、2022年9月22日および10月21日と24日に、それぞれドル売り・円買い介入が行われました。当時の財務省高官発言や関連イベントを時系列にまとめたものが図表1です。鈴木財務相や神田財務官の発言をみると、やはり介入が近づくにつれて、警戒を強めるトーンになっているように思われます。また、日銀が市場参加者に為替取引の状況を照会する「レートチェック」は、3者会合よりも強い、介入間近のシグナルと判断されます。
財務省はすでに介入を意識する段階か、当局と投機の神経戦が続くなか、レートチェックに要注意
要人発言の警戒度の変化や、3者会合、日銀のレートチェックから、為替介入の可能性を考えた場合、図表2のようにまとめられます。これを踏まえ、改めて直近の要人発言を確認すると、神田財務官は3月25日、「今の円安の動きは明らかに投機が背景にある」、「常に準備はできている」と述べました。また、鈴木財務相は3月26日、「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せず適切に対応を取っていきたい」と発言しました。
これらの発言から、財務省は円安が進む為替相場に対し警戒を強め、介入を意識する段階に入っていると推測されます。仮にドル円が152円台に乗せた場合、ドル高・円安の流れが一気に加速する恐れがあるため、過度な円安を抑制したい通貨当局と、円安を試したい投機との神経戦はしばらく続くことが予想されます。こうしたなかで日銀がレートチェックを行えば、大幅なドル安・円高が見込まれるため、この先は特に注意が必要です。
(2024年3月28日)
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