2023年6月日銀金融政策決定会合プレビュー

2023/06/12

2023年6月日銀金融政策決定会合プレビュー

    • 引き続きYCC修正の有無が最大の焦点、最近の植田総裁発言などを踏まえ、その可能性を探る。
    • 植田総裁は先月、2%の物価目標の持続的・安定的実現が見通せる状況に至っていないと明言。
    • 債券市場も機能改善で今回据え置きか、今後の見通しは植田総裁の物価関連の発言に注目。

引き続きYCC修正の有無が最大の焦点、最近の植田総裁発言などを踏まえ、その可能性を探る

日銀は、植田和男新総裁のもとで2回目となる金融政策決定会合を6月15日、16日に開催します。最大の焦点は、引き続きイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正の有無です。現在、YCCにおける10年国債利回りの操作目標はゼロ%程度で、上下0.5%程度の変動幅が設定されていますが、市場では「変動幅の拡大」や、「操作目標の年限短期化」などが修正の選択肢にあがっています。

そこで以下、最近の植田総裁の発言などを踏まえ、6月会合におけるYCC修正の可能性について考えます。植田総裁は5月19日、内外情勢調査会で講演を行い、前回4月の会合で緩和継続を決定した考え方について、よく受ける4つの質問に回答する形で説明しました(図表1)。具体的には、①物価2%超での緩和継続、②物価の基調判断、③ベアなどを踏まえた物価目標達成の可能性、④副作用の評価、の4つです。

植田総裁は先月、2%の物価目標の持続的・安定的実現が見通せる状況に至っていないと明言

まず、①について、足元の物価上昇は「海外に由来するコスト・プッシュ要因」であり、「一時的」なものとの見解を示しました。そのため、「持続的・安定的な形で」物価の安定を実現するには、緩和継続が必要と説明しました。②に関し、これだけをみれば良いという「理想的な指標」は存在せず、「需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率」、「企業に対するヒアリング情報」などを勘案しながら総合的に判断すると述べました。

③では、賃上げの動きについて「今後も継続し、定着していくか」の見極めが必要とし、物価見通しについては、「不確実性は大きい状況」と述べ、現時点で2%の物価目標は「持続的・安定的な実現が見通せる状況には至っていない」と明言しました。そして、④は、副作用だけをみるのではなく、効果との比較で、副作用が「効果をどの程度打ち消しているのか、効果を上回っていることがないか」を点検することが重要と指摘しました。

債券市場も機能改善で今回据え置きか、今後の見通しは植田総裁の物価関連の発言に注目/span>

さらに直近の植田総裁の発言を確認すると、植田総裁は6月9日、衆議院財務金融委員会での答弁で、2%の物価目標を持続的・安定的に実現するには「まだ少し間がある」と述べました。そして、日銀が6月1日発表した、5月の債券市場サーベイでは、債券市場の機能度判断指数(DI)は、前回の2月調査から18ポイント改善し(図表2)、改善は2022年2月調査以来、5四半期ぶりとなりました。

以上を踏まえると、6月会合でYCCの修正が決定される可能性は低く、市場でも据え置きの見方が大勢となっています。したがって、今回の会合では、先行きの政策判断に関する手掛かりを探ることになると思われ、特に6月16日の記者会見では、物価に関する足元の判断と先行きの見通し、2%の物価目標達成までの距離感、そして副作用の見解についての植田総裁発言が注目されます。

 

(2023年6月12日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ